第34期竜王戦七番勝負で豊島将之九段(31)を4連勝で降してタイトルを奪取し、史上最年少4冠を達成した藤井聡太竜王(19)=王位、叡王、棋聖。11月19日にあった王将リーグで近藤誠也七段(25)に勝ち、渡辺明王将(37)=名人、棋王=への挑戦権を獲得して年度内の5冠獲得に向けて大きく前進した。来年1月から始まる王将戦七番勝負はどんな戦いになるのか。羽生善治九段(51)以来の全冠制覇の可能性はあるのか。十八世名人の資格を持ち、本紙コラム「棋界新時代」著者の森内俊之九段(51)に聞いた。【聞き手・武内亮】 ――今期の竜王戦を振り返って、藤井竜王の戦いぶりをどう見ましたか。 ◆現代将棋の最先端をいくような将棋で、藤井さんと豊島さんの両者の研究のあとがよく見えましたし、現代将棋ならではのスピード感を感じました。豊島さんにも有利な場面があり、チャンスもあったと思いますが、勝負どころの判断で藤井さんが
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ロシアによるウクライナ侵攻から1カ月以上が経過し、依然として悲惨な状況が続いているにもかかわらず、マスメディアやSNSでは、ロシアの侵攻を間接的に擁護する人が後を絶ちません。 「確かにロシア(orプーチン)は悪いとは思う。でも……」という「イエスバット話法」を用いて、ウクライナの問題点を同列に並べて指摘をする「Victim Blaming(被害者叩き)」や、ロシアの侵攻に批判の声を上げる人々に対して「戦争反対と言ったところで戦争は止まらない」と冷笑する言説が散見されます。 また、日本は中立的立場であるべきという言説も目立ちます。たとえば、2022年3月20日放送の「サンデー・ジャポン」(TBS系)で、政治評論家の杉村太蔵氏は、以下のような発言をして、インターネット上で大きな批判を浴びました。 「冷静に考えなきゃいけないのは、(中略)ロシアっていうのはG7の中で日本は一番近い国ですね。そうし
外交と戦争~抑止力の陰りとともに「米国の世紀」は終わるのか 自由世界のリーダーとして、米国に求められる平和創出への指導力 田中均 (株)日本総研 国際戦略研究所特別顧問(前理事長)、元外務審議官 バイデン米大統領は、インテリジェンス情報に基づきロシアのウクライナ侵攻に繰り返し警告を発してきた。しかし圧倒的な国力を持ち自由世界のリーダーである米国の最大の責務は、そのような暴挙を止めることではなかったか。 バイデン大統領は早々と米国は軍を派遣して介入するつもりはない、と言い放ち、予定されていたロシアのプーチン大統領との首脳会談も侵攻しないことが開催の条件であったとしてキャンセルした。これだけを見れば外交は機能せず、軍事力による一方的な現状変更を許してしまったということになる。 この戦争も戦場で結果が作られるということになってしまうのか。外交が役割を果たし悲惨な人命のこれ以上の喪失を止めることに
1.はじめに 気候変動問題が顕在化し、2020年10月に菅義偉首相(当時)により、50年に向けて温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指すと宣言されて以来、日本では、原子力がCO2排出削減にとって必要であると主張されるようになってきた。その後、21年10月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、「原発依存度を低減する」とする一方で、原子力を再生可能エネルギー(再エネ)とともに「実用段階にある脱炭素電源」と位置づけ「これらの電源を用いて着実に脱炭素化を実現することが求められる」としている。 国際的にも、22年2月には原子力を持続可能な経済活動に含めるEUタクソノミー(EU taxonomy for sustainable activities)を欧州委員会がまとめる等、原子力〝復権〟の動きが見られる。EUタクソノミーとは、持続可能な活動に属するものを分類するもので、この事業
「ウクライナには「ネオナチ」という象がいる~プーチンの「非ナチ化」プロパガンダのなかの実像」【上】【中】もお読みください。 6.ウクライナの「歴史修正主義」 ユーロマイダンで極右の政治的発言権が一躍強くなったころ、ウクライナではいわゆる「歴史修正主義」の問題が持ち上がりだした。問題視されたのが第2次大戦前に結成されたウクライナ民族主義者組織の指導者ステパン・バンデラの再評価である。 私はサッカーフーリガンの政治化、さらには世界の極右・ネオナチ事情を追ってきてはいるが、この東欧の民族主義については門外漢である。よってこのバンデラ主義の解説については、他の方に譲りたいのだが、簡単にだけ説明をする。 バンデラ主義とは、第二次世界大戦前に発生したウクライナ・ナショナリズムの運動のことで、ウクライナを支配していたソ連政権下で発生し、1941年にナチスドイツがソ連と開戦すると、ナチスドイツに協力し、そ
「ウクライナには「ネオナチ」という象がいる~プーチンの「非ナチ化」プロパガンダのなかの実像【上】」はこちらからお読みいただけます。 3.「ネオナチが正規軍に組み込まれている世界で唯一の国」 ユーロマイダンの騒乱で親露派の大統領ヤヌコヴィッチが国外脱出するやいなや、ロシアは強引な手に出た。クリミア半島を接収し住民投票のすえにロシア領としたのだ。さらに東部のドネツク・ルガンスク2州で親露派武装勢力が蜂起し、独立を宣言した。背後にロシアがいるのは誰がどう見ても明らかだった。ここから親露派勢力が占拠した東部で何年も続く内戦、東部紛争が始まった。 ユーロマイダンで名をあげたフーリガンと極右の連合体であるアゾフも含めて、様々な極右団体が東部紛争の最前線に、武装化して現れたのである。そして彼らは大活躍してしまう。 ウクライナで長く続いた汚職と腐敗は、アフリカの発展途上国なみである。腐敗認識指数の国別ラン
1.「これはロシアのプロパガンダではありません」 英語で「象が部屋にいる」という言い回しがある。 どういうことかというと、「あんなにも大きな象が部屋にいたとしても、あえて見なかったことにする」という意味である。誰もが知っていることだとしても、なかったことにしたほうがいい。そういうことは確かに世のなかにはあるかもしれない。 プーチンが、「ウクライナを非ナチ化する」と宣言したとき、大方の人々は狐につままれたような反応で、そのうち識者や国際政治学者はこぞってプロパガンダであると断定しだした。だが、本当にそうなのだろうか。 アメリカの政治専門紙である「ザ・ヒル」は、2017年に、「ウクライナの極右の存在は決してクレムリンのプロパガンダではない」と題された記事で、こう警告している。 「西側の識者は、ウクライナにネオナチ集団は存在せず、モスクワが描いたプロパガンダの主張にすぎないという。しかし、これは
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