西日本を襲った豪雨が引き起こした土石流は、各地の山あいの集落になだれ込んだ。広島県東広島市黒瀬町の洋国(ようこく)団地では、一戸建て49戸のうち約10戸が大破し、ほかの約10戸にも土砂が流れ込んだ。しかし、犠牲者やけが人はゼロ。「日頃の自主防災活動が実を結んだ」と感じる住民もいる。 6日朝、洋国団地は激しい雨音に包まれていた。 「空襲みたいな雨の音じゃ」。団地に暮らす女性(90)は昔を思い出し、怖くなった。女性も夫(83)も足が不自由だ。土砂降りの雨の中、自分たちだけで避難するのは難しい。 戸建てが並ぶ洋国団地では、災害時に自力で避難するのが難しい住民について避難を助ける「担当者」をあらかじめ決めていた。 「雨が怖いけえ、避難所に連れて行ってください」 女性は「担当者」の大野昭慶(あきよし)さん(75)に電話した。午前8時ごろ、迎えに来てくれた大野さんの車で約4キロ離れた市の保健福祉センタ