棋聖と王位、2つのタイトルを最年少で獲得した藤井聡太さん(18)の活躍で、大いに盛り上がる将棋界。トップ集団であるA級10人のひとりで、大阪大大学院で哲学を修めた異色の棋士、糸谷哲郎八段(32)は「2、3世代後の棋士は藤井さんレベルの実力が普通になっているでしょう」と言う。将棋は劇的に進化しているらしい。どういうことだろう。関西将棋会館(大阪市福島区)で、インタビューに臨んだ。 (聞き手・坂本英彰編集委員) 「ここぞ」でギア「棋士はギアを入れることができるんですよ」 不思議な表現に、引き込まれた。棋士は運転免許を取らないひとが多い、という。糸谷さんも免許を持たない。なのにギア、とは。 「普通ひとはいろんなことに注意を分散させていますが、棋士はクセで運転中でも将棋のことを思うと集中してしまう。それもゼロから10みたいに、いきなり。危険極まりない」 運転には向かないが、棋士としては重要な素質だ