2013年4月、国際政治学者の遠藤乾氏が『統合の終焉――EUの実像と論理』(岩波書店)を上梓した。本書は、連邦国家という大文字の「統合」が終焉したEUがいまだ生き続いているのはなぜか、その論理と実像に迫る意欲作であるのみならず、国境を越えたガバナンスをどう構築していくかのヒントに満ちている。終わりなき日常を生きるEUからわれわれが学ぶべきこととは? 政治学者・吉田徹氏によるインタビューをお送りする。(構成/金子昂) 吉田 最初の質問なのですが、国際政治学、EU政治を研究されている遠藤さんは、いまはどんな研究をされているんでしょうか? 遠藤 「なぜ遠藤が?」と思う方もいるでしょうけど、2010年に中国の漁船が尖閣諸島付近で海上保安庁の巡視船に衝突してから、日中関係や日本の安全保障について頭から離れなくて。どうしても離れないんですよ。 吉田 それは専門のEU政治と繋がりがあるんですか? 遠藤