高校生の時、本の背表紙の裏には貸出管理カードがあって、そこに本を借りる時、名前を書くことがルールでした。なにかのきっかけで、読んでみたい、でもきっとあまり周りの人は手にとっていないだろうな、という本に、予想通りまっさらの貸出カードがあったときは、僕が本の中にある世界の“地図”を埋めていくんだ、と特別な気持ちになったことを思い出します。 一方で、手にとった本で、あまり他の誰かが読んでいることを予想していなかったもので、1人だけ、とか貸出カードに名前が書いてあるものを見つけたとき、その人への関心を持つと共に、妙に、その人とその本の世界を共有しているという、特別の間柄を感じたことも記憶しています。 そうした、本の共有については、かなり個人的な体験の一部だった高校生の頃を過ぎ、大学に入ると、読んだ本についてあれこれ話すというコミュニケーションがあることを知りました。これはとても新鮮でした。本との出