第一章 食料戦士の名の下に 昭和20年(1945)8月15日、日本はポツダム宣言を受諾、太平洋戦争は終結した。この日、日本の主義主張を賭した戦いは終わり、日本が生き延びるための戦いが始まった。 一 敗戦、そして 1.終戦直後の食糧事情 敗戦の衝撃を日本人の心に刻み、昭和20年の夏は終わりを告げた。しかし、収穫を祝うべき実りの秋はやってこなかった。生産設備の軍需転用や戦災による肥料の供給不足、徴兵による労働力不足に加え、夏には冷害と風水害が日本列島を襲い、稲作、畑作共に明治38年(1905)以来40年ぶりの凶作となった。冷害の原因は親潮の南下といわれており、イワシやサバなど大衆魚の魚影も沿岸を遠く離れ、漁船と労働力の徴用、戦災や燃料油不足で水産業が弱体化していたこともあって、漁獲高は大きく減少した。 さらに、総計650万人を数える海外からの復員と引揚が始まり、流入する人口が食糧不足に追い打ち