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ブックマーク / booklog.kinokuniya.co.jp (6)

  • 『ハンナ・アーレント』矢野久美子(中央公論新社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「20世紀のメインストリートを駈けぬけて」 自分の所属がこの四月から変わり、仙台に住み始めた。この書評空間も一区切りを迎えるとのこと、その最終回として駆け込みで投稿しようと思い立った。となると、やはりこの一冊。アーレント研究で定評のある著者が、20世紀を代表する女性哲学者の生涯に正面から取り組んでいる。 昨秋、岩波ホールで封切られたドイツ映画『ハンナ・アーレント』(マルガレーテ・フォン・トロッタ監督作品)が、筆禍に屈しなかった哲学者の生き方を丹念に描き、地味ながらヒットしたことは記憶に新しい。その最良の解説がこれ。アーレントの伝記としては、ヤング=ブルーエルの大著(邦訳晶文社)が今なお決定版だが、書が、日語で書かれた格評伝として今後読み継がれていくことは間違いない。生い立ちから丁寧にヒロインの波瀾万丈の一生を描いて、間然するところがない。何より、著者の

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  • 『『印刷雑誌』とその時代―実況・印刷の近現代史』中原雄太郎ほか(印刷学会出版部) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「ニセ札の作り方、教えます」 最近必要に迫られて古ばかり読んでいるから、新はほとんど読めていない。なので、むかし私が編集した、今でも新で買えるについて書いてみる。 『印刷雑誌』という名前の雑誌がある。「デジタル雑誌」に対する「印刷雑誌」という意味ではなく、“印刷の技術・科学情報の紹介”を目的とした月刊雑誌だ。 日初の印刷専門誌として生まれた初代『印刷雑誌』の創刊は1891年。その後、誌名変更などを経て1918年に再創刊された2代目『印刷雑誌』は現在も印刷学会出版部から発行されている。 書、『『印刷雑誌』とその時代 — 実況・印刷の近現代史』(以下、『その時代』と略)は、第1部が監修者によるジャンル毎(「印刷と社会」「印刷技術」など)の解説、第2部が『印刷雑誌』掲載記事のベストセレクションになっていて、「当時の印刷人が同時代を記した臨場感溢れる掲載記事を年代

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  • 『稲の大東亜共栄圏-帝国日本の<緑の革命>』藤原辰史(吉川弘文館) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 いままでいちばんおいしかったコメは、フィリピン南部ミンダナオ島ダバオ市街地から少し内陸に入ったカリナンでべた陸稲の赤米ジャバニカだ。日人が普通にべる白米ジャパニカより粒が大きく、香りとともにじっくり味わうことができた。1985年に調査のために下宿していた家の奥さんは、市場でちょっと変わったものがあると、買ってきてべさせてくれた。たくさんの種類の地場もののコメやイモ、野菜があることがわかった。タイのバンコクのスーパーマーケットに行っても、いろいろなコメがあることに驚かされる。ジャスミンライス(香り米)として世界的に有名になった輸出用とは違い、人びとが生活を楽しむためのコメがあるのだ。 書では、ただたんに人びとから豊かな生活を奪っただけではなく、「コメの品種改良の歴史にひそむ、「科学的征服」の野望」が語られている。裏表紙には、つぎのような書の概略がある。「

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  • 『ニセドイツ<1>』伸井太一(社会評論社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「面白うて やがて悲しき ニセドイツ書は、かつての東ドイツドイツ民主共和国)社会について、工業製品の紹介を中心に、ユーモアたっぷりに記したものである。 ドイツといえば、カメラでいえばライカ、クルマでいえばBMWといったように、われわれが憧れてきた工業製品の多くを作りだしてきたことで知られていよう。さらに、日社会との共通点として、人々の勤勉さや技術力の高さ、それゆえの工業製品のクオリティの高さなども知られていよう。 このように、我々の多くが半ば当たり前のように抱いているドイツに対するイメージを、書はいい意味で裏切ってくれる。まず、『ニセドイツ』という書名からして、ユニークだが、その由来について、著者は以下のように記している。 『ニセドイツ』は西(ニシ)ドイツをもじった言葉で、東ドイツ製品の 「妖しい」雰囲気を強調する効果を狙った題名である。 東西に分裂した国

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  • 『社宅街 企業が育んだ住宅地 』社宅研究会編著 (学芸出版社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 社宅街とは働くよろこび微粒子が拡散するパワースポット ビルの屋上にある高架水槽を観察していたころ、公団や社宅がよく目についた。川崎市にあった新日石油の社宅アパート群などは棟によって高架水槽のかたちが少しずつ異なっていて、棟の番号をあらわす数字といっしょに写真におさめてひとり悦に入っていた。駅近くの場所ながら建物は老朽化して敷地内の公園にも人の気配はなく、その一角だけなんとも寂しい感じはしたけれど、カメラを向けて見ていると、いつか昔、職を得て住まいを得て活気にあふれた若い男女や家族の姿が感じられてきてそれが楽しかった。長崎県の端島(軍艦島)を訪ねたときも同じ、働くための生気を養う住処にはその「気」がいつまでも吸着沈殿していて、時にそれが微粒子となって拡散し、気配を漂わせるのだと思った。自分で自由に使えるお金を初めて持ったときの興奮。これを何にどう使おうとかまわないのだ

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  • 『小さな建築』富田玲子(みすず書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 建物はひとの気配をまとう 『小さな建築』というタイトルに、ル・コルビュジエが両親のために建てた「小さな家」や、立原道造が「窓がひとつ欲しい」と書いて構想していたヒアシンスハウス、増沢洵設計の最小限住居、それを現代に活かした小泉誠さんらによる9坪ハウスを連想する。「小さな」建築。その小ささとは、何なのだろう。 寸法が小さい建築ということではありません。……人間が小さな点になってしまったような孤立感や不安感を感じさせない建築のことだと言えばいいのでしょうか。 巨大な建物のなかに入っても、孤立とか不安に無縁なことがある。あるいは孤立や不安を感じることに、酔うこともある。小さいからこそ孤立や不安を覚えることもあるから、建物の寸法によるものでないことはわかる。富田さんはさらに続ける。ここはどこ、今はいつ、これは何、隣はだれ、私はだれ、という感覚がもてること、自然と人が親密になれ

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