(フィナンシャル・タイムズ 2014年2月4日初出 翻訳gooニュース) ジョナサン・ソーブル東京支局長 もう何年も前からその人たちは、日本の公共放送NHKの門前でいつもやかましく騒いでいた。いろいろな右翼の末端組織が、公共放送の内容がリベラルに偏向しているとメガホンを通して抗議していたのだ。 自分たちこそが日本の愛国精神を守っているのだと自認する人たちは、いつもなにかしらNHKの放送に怒っている。NHKがもつたくさんのテレビやラジオのチャンネルを通じて放送される何かが、彼らの逆鱗に触れるのだ。それは戦争ドキュメンタリーだったり中国報道だったり。時には韓国のメロドラマでさえもが。 それが今ではこの人たちは、国の最高権力者を味方につけている。安倍晋三首相は(「日本のBBC」としばしば呼ばれる)NHKの役割をめぐって、激しい論争に火をつけてしまったのだ。保守派の安倍氏は日本の文化や教育に関わる
(フィナンシャル・タイムズ 2013年8月12日初出 翻訳gooニュース) ギデオン・ラックマン 安倍政権の広報外交はひどい。中国との溝が深まるだけでなく、アメリカとも距離を作りかねない。 日本が見せる広報外交のやりかたは、バカバカしさと陰険の間をウロウロしている。日本政府はここ数カ月というもの、アジアの周辺諸国をとことん不快にさせると同時に欧米の同盟諸国をとことん気まずくさせる、まさにそれを目的としているかのような外交の失策ばかりを次々に重ねてきた。 似たようなケースが先週もあった。日本は第2次世界大戦後最大級の海上艦を建造し、その進水式を行なったのだ。この艦は名目的には駆逐艦だが、実質的には空母だ。日本海軍の強化は、中国の軍拡に対する正当な対応かもしれないが、アジアの海で緊張が高まっている今、日本は慎重に進むべきだ。だとすると、この新しい艦を「いずも」などと名付けたのはいったいどこの天
参院選の直前にゲストスピーカーの1人として参加する予定だった催しが中止になった。選挙権のない高校生と大学生を集めて、模擬投票と意見交換をしようというイベントだった。 企画の一部にマニフェスト評価のネット中継というのがあり、これが未成年者の選挙活動にあたらないかを総務省に確認したところ、答えが「まだ凡例もなく法にゆだねる」で、危険性を排除できないので断念したという。 高校生、大学生とじかに話せると楽しみにしていたのでなんとも残念だったが、少しほっとした部分もある。「なぜ投票しないといけないんですか?」と質問されたらどう答えようかと、ドキドキしていたからだ。 なぜ投票すべきなのか。教科書的な答えはいくらでもできるが、そもそも大人でさえ納得できていないから投票率は上がったり下がったりするのだろう。昨年末の衆院選は史上最低の投票率だったし、今回の参院選も野党が弱体化した状況が過去最低の投票率だった
福島県の衆院選は、自民圧勝という結果に終わりました。この結果は住民の意識が変化したというよりも、むしろ政権交代以前の状態に戻ったとも言えます。福島2区の郡山市、旧市街地に住む私の主観ですが、そこで投票した多数の住民たちは、自民党への期待感よりも、他に託せる候補者がいないという理由による判断を下したではないか、と感じられます。 地方政治での得票には、政党や政策より先に、長く培われてしまった地元の人間関係や、利権のようなものも深く絡んでいるのは事実です。今回もその影響が無かったとは言えないでしょう。 ですが、その地方での人と人とのつながりが、全て悪いとも限りません。地元に強いという事は、その地での人間関係を重視しているという事でもあります。震災時にその繋がりがいち早い救済行動に繋がったという事実もありました。 先の選挙の際には、政権交代で全てが変わると言わんばかりの華やかな報道がされていました
離党、移籍、結党、解党、合流……政党や所属議員めまぐるしい動きの末に、12の政党が総選挙に臨むことになった。衆議院の解散以降、できたと思ったら消滅した政党があり、慌ただしく作られた政党があり、主要政策や幹部の言うことに変遷や食い違いがある政党もある、と言った具合で、主張や実像が分かりにくい。文字で書かれている公約を比べるだけでなく、討論会やインタビュー、街頭演説などを含め、私たちは自分の五感をフル稼働させて、それぞれの候補者や政党を見極めなければならない。 大事なのは、「今、何を言っているか」ではなく、「選挙後に、何をどうやるか」だ。予知能力などまるでない、私のような凡庸な人間が、選挙の後の数年間を予測するのは無理だ。けれども、がんばらなければいけない。なぜなら、日本は今後ますます深刻な状況に陥っていくことが予想されるうえ、最近の選挙を振り返ると、「今」話題になっている課題や、 人々の「今
「被災地では、震災後初の総選挙です」 衆院解散後、ニュースではそのような弾んだ声を何度か聞いたような気がします。震災後の選挙だから、福島の人からの反応が気になるのだろうとすぐに思い当たったものの、そこに住む私から見れば、現地はマスコミの興奮をよそに醒めているといってもいい空気を感じます。それは、そのコメントに必ず繋がるのが、ひたすらに「原発問題」だからではないでしょうか。(福島県郡山市在住・安積咲) ○マスコミが伝え続けた「福島」とは違う 私は福島県の郡山市、旧市街地に住んでいます。 郡山市は、福島県の中でも商工業が盛んな土地です。会津やいわきと違って、歴史的観光地としては弱く、港がある訳でもないこの県の中心地は、古くは宿場町として栄えていた流通と交通のハブとしての機能を活かし、商業的に発展するしかなかったと言ってもいい場所でしょう。 私の祖父は会津生まれですが、戦時中に東京で働き戦後に福
政治の主役とは誰なのか。政党か。政治家か。官僚か。「いやいや、国民に決まってるでしょ」と言う人もいるだろう。それならなぜ、政治に問題があるのは国会議員や役人のせいだと文句を述べる人が多いのか。主役じゃないのに。 一部の政党やマスコミは物事をまともに考える行為を放棄させている、という批判なら理解できる。脱原発とかTPP(環太平洋連携協定)とか消費税こそがこの選挙の争点だと彼らは言わんばかりだが、本来そんなものが争点になるはずもないことはサルでも5秒考えればわかる。 選挙で問われるべきはエネルギーの調達と電力需給全体の政策であって、原発をどうするかではない。権益の草刈り場と化すアジアで米中やASEAN諸国とどのような経済関係を築いていくつもりなのかであって、TPPではない。社会保障の全体像や財政のビジョンであって、消費増税ではない。木の話だけして森の話をしない。 そのほうが政党や立候補者にとっ
(フィナンシャル・タイムズ 2012年10月4日初出 翻訳gooニュース) ワシントン=ステファニー・キルヒゲスナー バラク・オバマ大統領は2期目を獲得するだろう——。民主党関係者の間で8月末から高まっていたその楽観論は、3日夜に消えてなくなった。第1回の大統領討論会で舌鋒鋭く論戦したミット・ロムニー氏に対して、オバマ氏は地味で静かだったからだ。 公共放送PBSのキャスター、ジム・レーラー氏が司会を務めた第1回討論会の直後、左寄りの米テレビMSNBCのリベラル評論家たちは、一気にロムニー氏の主張を攻撃し、信じられないといった様子で「バラク・オバマはどこに行った?」と戸惑っていた。 同局のコメンテーターのひとり、クリス・ヘイズ氏は、オバマ氏がロムニー氏に対して何ひとつまともに反論できなかったのは、好感度を維持しようという「内部の戦略」なんだろうかと不思議そうだった(オバマ氏にとって「人気」は
(フィナンシャル・タイムズ 2012年9月18日初出 翻訳gooニュース) ジャミル・アンダリーニ 先週から中国各地で燃え上がった反日感情と怒りのまっただなかにあって、過去に似たようなことがあった時には聞こえなかった通奏低音が静かに、しかしはっきりと聞こえている。中国中間層のバラードとでも呼ぼうか。 中国では何十年も前から、中国共産党が容認する抗議行動は外国に対するものだけだった。共産党は、国営メディアによる扇動的な報道を通じて定期的に対外国デモをけしかけて、後方支援さえしていた。 たとえば1999年にアメリカがセルビア・ベオグラードの中国大使館を爆撃した時がそうだったし、日本との間で無人島群をめぐる領土紛争が緊迫した2005年も同様だ。そして今また両国は、同じ無人の諸島をめぐってもめている。 そのほかにも中国で愛国的な情熱が爆発するたびに、外から観察する人間の目には同じ光景がはっきりと映
(フィナンシャル・タイムズ 2012年9月12日初出 翻訳gooニュース) ワシントン=エドワード・ルース 政治家のイメージを決定してしまう瞬間というものがある。後からはもう変更できないほど強烈に。もしかするとあれが、ミット・ロムニーにとってのその瞬間だったのかもしれない。 アメリカの外交官が11日夜に襲われた。それに対して共和党の大統領候補は実にてきぱきと、とげとげしい断定調で反応した。そしてその姿は、なぜロムニー氏が真の意味での支持者を獲得できずにいるのか、端的に映し出していた。 12日朝にはヒラリー・クリントン国務長官が、クリス・スティーブンズ駐リビア大使のほか、アメリカ人3人の殺害を非難する、沈痛な声明を読み上げた。その30分後にはオバマ大統領も同じように声明を読み上げた。ふたりとも主に、スティーブンズ氏の悲劇的な死について語っていた。 この間にロムニー氏はあからさまに政治的なねら
(フィナンシャル・タイムズ 2012年8月22日初出 翻訳gooニュース) アジア編集長デビッド・ピリング 3年前に政権を獲得したとき、日本の民主党は外交政策の抜本的な見直しを約束した。日米関係と日中関係のバランスを見直し、過剰な「対米依存」を是正し、中国との緊張関係を改善しようとした。当時の鳩山由紀夫首相は、世界はアメリカ一極時代から多極化へと移行しつつあり、日本は自分たちが生きていく「基本的な生活空間」としてアジアを再発見するのだと述べていた。 壮大なビジョンだった。今ではもうボロボロだが。いかにボロボロかは今週さらに明らかになった。中国が「釣魚台」と呼び、日本が実効支配する尖閣諸島をめぐり、日中で舌戦が繰り広げられた後、週末には中国各地の都市で反日デモが勃発した。こうした日中関係の緊張を受けて、日本政府は駐北京大使を交代したのだ。 政権の座についた民主党は、中国とより親しい関係を築け
(フィナンシャル・タイムズ 2012年6月6日初出 翻訳gooニュース) アジア編集長デビッド・ピリング オリンパスのマイケル・ウッドフォード、ソニーのサー・ハワード・ストリンガー、日本板硝子のクレイグ・ネイラー……。ここ数カ月の間に日本企業のトップを去った外国人CEOの行列はかなり長い。残る外国人トップのリストはそれに比べると短い。おそらく一番有名なのは、ブラジル出身のフランス人ビジネスマン、カルロス・ゴーン日産社長だ。約10年前に来日して以来、今なお日産自動車を率いている。最近では「ゴーン・アローン」と呼ばれているのも無理もない(訳注・映画「ホーム・アローン」にひっかけている。「ゴーンだけ」「ゴーンは独り」などの意味)。 日本を去る企業トップのパレードは、日本の経済界が世界から引きこもりつつあるかのような印象を与えた(ウッドフォード氏は10億ドル規模のスキャンダルを暴露してくれた後に、
(フィナンシャル・タイムズ 2012年6月17日初出 翻訳gooニュース) ミュア・ディッキー東京支局長 福島第一原発で起きた昨年の危機によって、日本では原発全停止の状態が続いていたが、それが終わることになった。日本政府は原子炉再稼働を最終決定したのだ。 関西電力は野田佳彦首相の発表を受けて16日、福井県の大飯原発再稼働に向けて準備を始めた。 関西電力は3号機と4号機の再稼働に向けて「安全を最優先」にしながら、万全な体制に向けて努力すると表明した。 関西は大事な産業地帯だ。再稼働によってその夏の停電懸念は和らぐだろう。また日本内外の原発推進論者たちは、福島第一原発が津波で大打撃を受けたことによる長期的な影響は、これで一定レベルに食い止められると歓迎するだろう。 しかしこの決定は、反原発活動家たちを激怒させた。反原発の人たちは、日本は地震大国でありながら、残る原子炉の安全性確保がまったく不十
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く