「経済を良くするために、大胆な金融緩和が必要」と叫ぶだけなら誰でもできるが、それを「2%の物価目標、2年で達成、2倍の資金供給と国債期間」という方策、すなわち、「どうすれば」へと落とし込むには専門的な能力がいる。軽部健介さんの『官僚たちのアベノミクス』は、政治スローガンがどのように異次元緩和という政策へと形成されていったのか、その過程をつぶさに描いている。その効用は別として。 ……… 5年経った今からすると、円高を是正したという意味で、異次元緩和の第一弾までは成功だったと言えるだろう。むろん、それなしで実現されたのかもしれないが、少なくとも時宜には合っていたし、輸入物価高による消費冷却という弊害が目立つ、第二弾以降の金融緩和と分けて評価すべきだろう。また、マクロ経済の安定化という点で、日銀による国債の大量購入は、時代を画すものになると思われる。 異次元緩和は、目標を達成できなかったが、その