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ブックマーク / jtsutsui.hatenablog.com (26)

  • 「公共性」ノート:再分配か承認か - 社会学者の研究メモ

    某出版企画で「公共性(公共圏)」や「市民社会」について書くことになりました。いろいろ復習しなきゃならなくなりましたので、ノートを作っていきます。(ひっそり作っていくと飽きるのでいくつか記事にします。) 第一弾はナンシー・フレイザーandアクセル・ホネット。 再配分か承認か?―政治・哲学論争 (叢書・ウニベルシタス) 作者: ナンシーフレイザー,アクセルホネット,Nancy Fraser,Axel Honneth,加藤泰史出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 2012/10メディア: 単行購入: 2人 クリック: 30回この商品を含むブログ (10件) を見る 上記の2章、ホネット「承認としての再配分」の読書メモ。 第1節 社会的不正の経験の現象学について ホネットがいうには、フレイザーは社会運動を批判理論の拠り所にする際、「社会運動は再分配を主張するものから、アイデンティティ・ポリ

    「公共性」ノート:再分配か承認か - 社会学者の研究メモ
  • 因果推論の社会学 - 社会学者の研究メモ

    前回の「関西計量社会学研究会」で、「計量社会学と因果推論」という主題でお話をさせていただいた。メモ代わりにそこで話したこと、その後に考えたことを書いておく。 まず、上記研究会で話したことは、短く言うと以下のとおり。 最近は観察データの分析でも因果推論(措置効果モデル)の枠組みが使われることが多くなっている。 因果推論の枠組みでは個体特性(性別、出生年、観察されない性向等)の「効果」は基的に除去される対象だが、他方で計量社会学者はその個体特性自体に関心を持ってきた。 多少厳密な因果推論(措置効果モデル)の枠組みだと、同一個体に割付(アサインメント)できないものは原因にはなりえない、とされる。性別は(例外はあろうが)その典型例である。しかし主に社会学ではこういった個体の属性の「効果」をみるということがしばしばなされていた。これに対して、因果推論派の方からは「それは違うんじゃないか」というツッ

    因果推論の社会学 - 社会学者の研究メモ
  • 科学における不正と発見 - 社会学者の研究メモ

    「あの件」については何も意見とか書いてなかったのですが(たくさんの人がたくさんの興味深いことを書いてくれているので)、ひとつだけ気になったことがあります。 何かしらすごい科学的発見があって、その発見をした人が何らかの理由でその発見を露骨に不正な手続きで世に出して、その不正のゆえにその科学的発見が一定のあいだ認められなかった、という事例は、これまでどれくらいあるのかな、ということです。(「ないだろう」と思っているわけではなくて、事実としてそういうことがよくあるのかどうか知りたい、ということ。) 一部の科学哲学では「発見の文脈」と「正当化の文脈」を分けているので、この分け方を使うとすれば、発見においてはひらめきでも夢のお告げであっても、科学的に非難されることはあまりないでしょう。しかしその結果を正当化する文脈では、現在の科学コミュニティは(総体として)それなりに厳しいスタンスをとっています。

    科学における不正と発見 - 社会学者の研究メモ
    woykiakes
    woykiakes 2014/03/23
    メンデルみたいにずっと後になってからバレたのもあるしな
  • 社会学と因果推論 - 社会学者の研究メモ

    8月に入ってからのICPSR統計セミナー、ゼミ合宿、データクリーニング合宿、数理社会学会という怒涛のイベント+出張シリーズが一段落したので、ひさびさに更新します。 先日行われた第56回数理社会学会の新規会長(近藤博之先生)の講演のタイトルは、「ハビトゥス概念を用いた因果の探求」というものでした。そして(すでに論文として発表されている)2年前に行われた前会長の石田浩先生の講演は「社会科学における因果推論の可能性」というものでした。近藤現会長が狙ったのかどうかは不明ですが、両者とも社会科学あるいは社会学における因果関係の位置づけについて極めて示唆的なものです。 石田先生の講演では、ラザーズフェルドのelaborationの考え方から始まり、60年代後半から70年代にかけての回帰分析時代、その後のパネルデータ分析の隆盛、そしてルービンらの反実仮想的な枠組みに至るまで、計量社会科学における因果関係

    社会学と因果推論 - 社会学者の研究メモ
  • 『統計学が最強の学問である』感想 - 社会学者の研究メモ

    読みました! 自信をもって学生にお勧めできるであると思います。 統計学が最強の学問である 作者: 西内啓出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2013/01/24メディア: 単行(ソフトカバー)購入: 11人 クリック: 209回この商品を含むブログ (126件) を見る 「統計学が最強」という言い方の"根拠"となっているのは、なによりもランダム化比較実験によって理論や経験知をすっ飛ばして因果関係に白黒つけることができるから、ということらしいです。このカテゴリーの(いわゆる統計リテラシー)は数あれど、たいていは調査(標抽出)の怪しさや分かりやすい擬似相関について言及があるのみで、ランダム化を基軸に据えた記述はほとんどなかったと思います。言うまでもなく、R. フィッシャーの大発明であるランダム化は、実験のみならず調査観察データの分析の方針(特に計量経済学のもの)にも決定的な影

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  • 説明と選抜:統計学における2つの「関心」 - 社会学者の研究メモ

    社会学者や経済学者にとって、統計学をベースにした計量分析とは、何かを因果的に説明する道具であるという側面がある。賃金を学歴で説明するというとき、それは他の条件が同じで学歴が変化したときの賃金の変化量を推定する、という意味である。 (記述的な分析手法を含めて)統計学を学ぶ人のほとんどは、この「説明(explanation)」のためにそれを学んでいるのだと考えられる。 しかし統計学には、それとは全く異なった目的が託されることもある。それは「選抜(selection)」である。統計学を選抜に使うというのは、それをアカデミックに活用している研究者からみても、実はあまり馴染みのない考え方である。というのも、あとで詳しく述べるが、選抜は学問的説明とは相容れない考え方だからだ。 しかし選抜は、実践家においては大いに意味がある考え方である。「限られた回数の耐久力テストの結果から、真に優れた個体を選抜する」

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  • 社会保障の「気前良さ」は政府支出の大きさでは測れない - 社会学者の研究メモ

    政府は増大する社会保障支出を背景に、いよいよ増税に向けた調整を格化させている。他方でアカデミズムにおける社会保障論(福祉国家論)をみると、日は基的に社会保障に関して低い水準にあるということがたいていの議論の出発点となっており、現在の政府の政策展開とアカデミズムのあいだには奇妙なズレがあることが分かる。 このズレはいかにして生じているのだろうか? ある国の社会保障の手厚さを測る指標としてしばしば社会保障支出のGDP比が用いられる。また、日政府はしばしば国民負担率という指標を用いる。しかし、たとえば年金支出は高齢化率にしたがって上昇するので、「年金支出の規模が大きいから社会保障が充実している」ということにはならない。失業率と失業手当の関係も同じで、失業率が高ければ失業手当支出も増えるが、かといって雇用関連支出が「充実している」というわけではない。 図は2007年のOECD諸国の社会支出

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  • 「家族福祉論の解体」感想 - 社会学者の研究メモ

    先日の研究会にも参加してくれた久保田さんの最近の論文です。 久保田裕之、2011、「家族福祉論の解体」『社会政策』3(1): 113-123. 非常に示唆的な論考で、興味深く読みました(今年一番の収穫だったかも)。私なりに内容をまとめると...(下手なまとめかもしれませんが...)。 家族を作ることが当たり前であったのは過去の話、結婚するかしないか、子どもをつくるか作らないか、個々人が選んでいく時代になっている。 それなのに、福祉供給の対象を「家族」に設定すると(つまり「家族福祉」)、あえてその選択をしなかった人に対しては不公平だ、ということになる。 「じゃあ福祉供給を個人単位にすればいいじゃない」と言いたくなるかもしれないが、そうはいかない理由がある。家族を作るか作らないかにかかわらず、人が生活していく上で必要である条件はあるはずだから。たとえば「(非対称的な)ケア」。誰だって子どものこ

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  • 量的研究と質的研究の連携に向けて - 社会学者の研究メモ

    足の調子が少し悪くてひきこもってます...。しかし手は動く。 筒井が所属する立命館大学人文科学研究所からの助成で、「人文学・社会科学における質的研究と量的研究の連携の可能性」研究会をスタートさせました。さしあたり3年間継続します。研究助成を申請する際に固定メンバーを10人ほど指定していますが、研究会はオープンにする予定ですので、興味のある方はぜひご参加ください。(9月19日に第1回研究会を開催予定。) 特に社会学では、質的研究や質的データを利用したモノグラフ的研究と、計量データを活用した量的研究のあいだでは、ほとんど協力関係もなく、また互いに妙な誤解を抱きあっている部分もありそうです。研究会では、あまり前提を置かずに互いの研究実践の特性に関する理解を深めることを通じて、合理的な「連携」のあり方を模索することが目指されます。 とはいえ議論の「とっかかり」は必要になると考えています。あくまで

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  • 『大卒就職の社会学:データからみる変化』一部サマリ - 社会学者の研究メモ

    学部ゼミ生を抱える身として、サマリをいちおうメモ程度に。(一部の章のみ。) 大卒就職の社会学―データからみる変化 作者: 苅谷剛彦,田由紀出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2010/03/20メディア: 単行購入: 3人 クリック: 38回この商品を含むブログ (14件) を見る 1章 日の大卒就職の特殊性を問い直す:QOL問題に着目して(田) バブル期以降、大学進学率が上昇しているのに、それに対応した大卒の労働需要の上昇がなかった。採用が改善したポスト氷河期(07〜09年あたり)では大卒求人総数がバブル期を上回ったが、それ以上に大卒者が増えていたので、求人倍率はバブル期なみには戻らなかった。(構造的に「大卒余り」状態。) 「ロストジェネレーション世代」とポスト氷河期世代の働くことについての意識(新入社員当時の調査)を比べると、後者は前者に比べて標準的働き方(最初の会社に

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  • (非計量さん向けの)統計学の話:バイアス編 - 社会学者の研究メモ

    (今回はですます調でいく。いや行きます。) まずは、私の後輩や知人たちが書いたです。↓ エスノメソドロジー―人びとの実践から学ぶ (ワードマップ) 作者: 前田泰樹,水川喜文,岡田光弘出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2007/08/03メディア: 単行(ソフトカバー)購入: 6人 クリック: 1,065回この商品を含むブログ (99件) を見る このなかに、次のような文章があります。 どのような研究に対しても、その主張の妥当性を、そこで採用されている方法と無関係に論じることはできません。だから、「事例の数」やそこから得られる「一般性」を問う前にまず、ある研究が明らかにしようとしていることが、そもそも事例の数によって保証される種類のものなのかどうかということ自体を考えなくてはなりません。 このことは言ってみれば「当然」のことなのですが、研究者の間ではあまり考えぬかれていない重要な論点

    (非計量さん向けの)統計学の話:バイアス編 - 社会学者の研究メモ
  • 質的研究と量的研究について - 社会学者の研究メモ

    とある出版企画でそういうお話を書かなければいけないので、社会学におけるいわゆる「質的研究」と「量的研究」の区別についてメモを書いておく。 結論から言うと、次のように考えるとミスリーディングである。つまり、「まずある<理論>があって、それを<実証>する手段として質的な研究と量的な研究がある」という考えである。こういう考え方は、混乱のもとであるから、避けたほうがよい。多くの社会調査論のテキストでは調査手段の選択として「質的調査」と「量的調査」を選択することがあるかのように書かれているが、少々説明不足である。そうではなく、さしあたり量的研究とその他のタイプの研究が、量的研究とどのような関係にあるのか、と考えたほうがスッキリする。 分野外の研究者からすれば見えにくいが、実際には量的研究と言っても様々である。が、現状からして、「複数のパラメータを含むモデルを構築し、それをデータに当てはめて統計学的推

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  • GlobalIndexからみた各国のグローバル化の進み具合 - 社会学者の研究メモ

    入社式での社長のスピーチから人文系の学術書にいたるまで、頻繁に使われる「グローバル化が深まる中で...」という枕詞ですが(ここ2ヵ月ほどはその地位を「震災」に譲っているようです)、たいていの場合は特にデータに基づかない印象論で語られていると思います。もちろん「グローバル化とはこれだ」という唯一の定義などはないわけですが、定義を明確にさえしていけば徐々に議論が有意義になっていくと思います。 GlobalIndex グローバル化についてはいくつか尺度が提起されているようですが、ここでは比較的信頼できる研究者がつくりあげた"GlobalIndex"を紹介しておきます。GlobalIndex(グローバルインデックス)とは、ドイツの社会学者H-P.BlossfeldらBamberg大学のチームが中心となって提起しているグローバル化の指標です。作り方等についてはウェブサイトを見て欲しいのですが、簡単に

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  • サンプリングについてのひとつのお話 - 社会学者の研究メモ

    世論調査などでもしばしば「層化二段無作為抽出」という言葉を目にする人は多いのではないだろうか。この手続を簡潔に説明することはなかなか難しいので、何度テキストを読んでもピンとこない、という人は意外に多いようである。その理由の一つは、「単純ランダムサンプリング(unrestricted random sampling)」を最初に説明して、それからその他の抽出法を応用として説明しようとしているからではないか、という気がする。そのせいか、一般の方の中には「母集団の正しい姿を捉えるには単純ランダム抽出が最善で、それ以外は亜流」といった考え方をしている人も多いようだ。 ところが、統計に関わる研究者のほとんどは、実際には「単純ランダム抽出は最善というよりも次善」ということを理解した上でデータを扱っている。それが一般の人には理解しにくい思考プロセスを踏まえているために、いろいろな誤解が生じているようである

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  • 雇用におけるジェンダー格差をどう測るか? - 社会学者の研究メモ

    2008年のOECD Employment Outlookの第3章では、ジェンダーとエスニシティによる雇用・賃金格差が特集されています。目についたところを抜粋すると... OECD参加国では、女性の雇用率は男性より20%小さく、賃金は17%低い。 賃金格差が最も大きいのはトルコ、メキシコ(この2国はこういった統計の常連ですが)に加え、ギリシャ、韓国、そしてイタリアである。 1982年から2003年までの女性雇用率の増加のうち50%は、女性の高学歴化によって説明できる。 とはいえ高学歴化の効果は限界に達しつつあり、特に雇用率格差が小さい国にとっては、女性の学歴向上によるこれ以上の雇用率の格差は望めない。 逆に雇用率の格差が大きな国は女性の高学歴化による格差縮小の余地は大きいが、(なぜか)日韓国ではこの効果はゼロに等しい。 賃金格差についてみると、学歴はほとんど説明力がない。性別職業(産業

    雇用におけるジェンダー格差をどう測るか? - 社会学者の研究メモ
  • 「排外主義」についての文献とデータ - 社会学者の研究メモ

    に帰国して約3週間、遅ればせながらシノドス・ジャーナル(および朝日web ronza)に掲載していただいた記事の文献情報を掲載する。 排外主義の規定要因についての研究にはそこそこの蓄積があるが、国際比較可能なデータを使用した経験的分析の論文のみごく一部紹介する。 Quillian (1995)はEurobarometerからヨーロッパ12ヶ国データを使って、移民は雇用に対する脅威だという考えが反移民的態度に結びつく傾向を指摘した。 Scheepers, Gijsberts, and Coenders (2002)は合法移民に市民権を与えることに対して、社会経済的に不利な立場にある人々が否定的である傾向を見いだした。 おそらく最も包括的な研究はSemyonov, Raijman, and Gorodzeisky (2006)によるもので、国別クロスセクションではなく国別パネルデータを利用

    「排外主義」についての文献とデータ - 社会学者の研究メモ
  • 低成長経済化における福祉国家戦略 - 社会学者の研究メモ

    以前取り上げた、 Esping-Andersen, Gosta, 1996, "After the Golden Age? Welfare State Dilemma in a Global Economy" in Gosta Esping-Andersen (ed.), Welfare States in Transition. Sage Publications. だが、かなり断片的なまとめになっていたので、ここでもう少しだけ詳しめの紹介をする。個人的な感想だが、この論文は記述が散漫で、意図を拾いにくいところがある。以下のまとめも、重要な論点を拾い損ねている部分があると思うので、その点割り引いてほしい。もちろん評価にあたってはもとの文献を読む必要がある。ここでの紹介は、あくまで参考程度に。(また、邦訳は手元にないので参考にしていない。) ※※※ 福祉国家はいま、かなり難しい局面にさしか

    低成長経済化における福祉国家戦略 - 社会学者の研究メモ
  • なぜ社会学の格差研究はややこしいのか(その二) - 社会学者の研究メモ

    前回説明したように階層とは価値付けされた資源へのアクセスの格差であり、あくまで人々による資源の価値付けに依存した社会構造の記述である。したがって多くの人に共有された価値付けがない資源については、そういった資源へのアクセス格差を議論することにあまり意味はない(たとえばマニア向けアイテムの所持格差など)。 そのうえで、社会学では主に二つの資源格差の源に注目する。職業と学歴である。このなかでも特に職業が重視される*1。理由は様々であろうが、時点時点での所得よりも人々の経済階層の全容を反映しやすいこと、名誉の源泉となりやすいこと、といった事情がある。 社会学の階層研究にはさまさまなバリエーションがあるが、目立つのは前回触れた「階層帰属意識のメカニズム」の研究と、「両親階層による人到達階層の不公平(階層の再生産)」の研究である。前者を引っ張っているのは高坂健次先生や吉川徹先生である。後者にはより多

    なぜ社会学の格差研究はややこしいのか(その二) - 社会学者の研究メモ
  • なぜ社会学の格差研究はややこしいのか(その一) - 社会学者の研究メモ

    院生に勧められて以下の論文を読んだ。専門分野(家族)のジャーナルと違って『社会学評論』は少々見落としがちになるので、こういう機会は助けになる。 吉川徹,2003,「計量的モノグラフと数理:計量社会学の距離」『社会学評論』53(4):485-498. 内容自体は「階層帰属意識」の研究における対照的な二つのアプローチ(数理モデルからのデリベーションとデータによるその検証、および帰納や歴史的解釈を重視した「計量モノグラフ」的研究)との比較についてであった。ここでは単純化して言えば「階層についての主観と客観の関連・無関連」が解かれるべき謎となる。 筆者によれば、階層帰属意識の問題設定は「70年代の総中流から90年代の不平等へ」と変遷しており、「総中流」現象の解明(「誰が、なぜ自分が中流であると回答したのか?」)において社会学は一定程度の研究成果を残したのだが、不平等(不公平)感については、経験的に

    なぜ社会学の格差研究はややこしいのか(その一) - 社会学者の研究メモ
  • 社会階層と社会的ネットワークの多様性 - 社会学者の研究メモ

    (注意:論文内容に関する判断は、ぜひ実際の論文をお読みになった上でお願いします。) 大和礼子, 2000, "社会階層と社会的ネットワーク"再考, 『社会学評論』51(2), 235-250. 家族と社会的ネットワークに興味がある研究者なら読むべき重要な論文だと思った。(うかつにも見落としていたが、院生が教えてくれた。)「階層とネットワーク」といえば、最近はN.リンらのグループによるソーシャル・キャピタルの階層格差についての調査研究が盛んになされてきたが、この論文ではむしろ「階層が高い方が社会的ネットワークが多様である」という既存研究を出発点として、ジェンダーと社会的地位(主に学歴)の二つの階層の観点から個人の持つネットワークの違いを実証している。 データは以下のとおり。兵庫県内の1930〜59年生まれの有配偶女性(とその配偶者)の1534ケースを層化二段抽出、うち638ケースを回収(41

    社会階層と社会的ネットワークの多様性 - 社会学者の研究メモ