<葉を噛み切って集め、巣に持ち帰ってキノコを栽培。商売道具の鋭い歯は、重金属の原子で覆われている> 人類の定住生活を可能にしたともいわれる農耕は、歴史上で大きな役割を果たしてきた。実はアリのなかにも、一種の栽培業を営む種類がある。中南米に分布するハキリアリだ。 ハキリアリは鋭い歯を使って木の葉を小さく切り取り、地下の巣に持ち帰って菌床をつくる。正確には、餌となるのは私たちが想像するようなキノコではなく、成長前の姿でカビのような見た目をした「菌糸体」だ。いわゆる傘と柄の形となる子実体に成長しないよう適度に刈り取りつつ、菌糸を繁殖させてゆく。 また、まるで専門の農家が優れた肥料を知っているように、菌床に良い栄養分を本能的に理解している。豪科学誌の『コスモス』は、デンマークの学者による研究を紹介している。ハキリアリの好む餌を実験で確かめたところ、菌にとって害となる多量のタンパク質を含む餌を避けて