「藤子・F・不二雄」追悼 『藤子・F・不二雄 SF全短編』第一~三巻(中央公論社)によせて ▼加藤 秀一 【はしがき】 本稿は、岩波書店から発行されている雑誌『へるめす』に掲載されたものである。いま手元に掲載誌がないため、何年の何月号だったかを記すことはできないのだが、発行されてからすでに半年は経っているはずである(1997年10月18日現在)。私としては、このまま消えていくにまかせるにはしのびない文章なので、ここにアップすることにした。近い将来、本稿で示唆したような考えを、よりまとまったかたちで展開する準備を進めている。 ジョン・レノンが狂人に殺されたとき、オノ・ヨーコが日本の新聞の一面全部を買い取って発信したステートメントのなかに、ジョンの死について書くことで日銭を稼ぐ人々を責めはしない、という趣旨の一節があった。それを読んだときの穏やかな感動に忠実であろうとすれば、つい最近亡くなった