見た目はホントにそっくりな双子。それってつまり遺伝子が100%同じ一卵性双生児なわけだけど、性格や気質も見た目ぐらい同じなの? 違うとしたら、どのぐらい? もっと言うと、個人の形成に遺伝と環境はどんなふうにかかわっているのだろうか――。双子を対象として、遺伝と環境が人間に与える影響を調べる「双生児法」により、これまで7000組以上の双子を調査してきた安藤寿康先生の研究室に行ってみた!(文=川端裕人/写真=的野弘路) 第1回 遺伝か環境か、それがモンダイだ 2012年1月23日
1996年、ある特定の遺伝子と、特定のパーソナリティとの関係を明らかにする一大発見が発表された。それも、一気に2つの遺伝子(群)が特定されたということで、「遺伝と環境」に興味を持つ関連領域は大騒ぎになった。 なお、パーソナリティは、心理学の用語としてカタカナのまま使われることが多いようで、定義も研究者によってまちまちだ。日常的な言葉としては、性格とか気質、といったものに近いのだろうがこれらも心理学の言葉としてそれぞれ使われるから紛らわしい。ここでは、カタカナのままにしておく。 1996年の大発見のうちのひとつは、このようなものだ。 「DRD4という遺伝子がありまして、これはドーパミン(脳内に存在する神経伝達物質のひとつ)の受容体に関するものだと分かっていました。それが、心理学的なパーソナリティのひとつ、「新しいもの好き」──専門的には新奇性追求とか言われますが──と関係があることが分かった
慶應義塾ふたご行動発達研究センターの長年の研究成果が「ふたご研究シリーズ」として出版中です。1998年、慶應義塾双生児研究プロジェクト (KTP) 開設以来、発表してきた数々の研究を分野別にコンパクトにまとめています。 第1巻、安藤寿康監修、敷島千鶴・平石界編『認知能力と学習』は、2021年2月に刊行されました。 第2巻、安藤寿康監修、山形伸二・高橋雄介編『パーソナリティ』は、2023年9月に刊行されました。 第3巻、安藤寿康監修、藤澤啓子・野嵜茉莉編『家庭環境と行動発達』は、2021年5月に刊行されました。 一般の方にも興味をもっていただけるよう、わかりやすい説明を心がけました。ぜひご一読ください。 慶應義塾ふたご行動発達研究センター内の子どもを対象とした研究プロジェクト『首都圏ふたごプロジェクト (ToTCoP)』では、慶應義塾大学経済研究所こどもの機会均等研究センターと連携した共同研
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スタンフォード大学の教授で数学者の時枝正(ときえだ・ただし)は、「おもちゃ」を使って数学や物理の定理を解き明かす。スープ皿や木のレール、大きなコインを手に、「ショー」とも呼べそうな講義をいかにも楽しげに始めるその姿に、聴衆は一瞬にして心を惹きつけられるという。 数学者には二つのタイプがいるという──。一つは、チョークを握り黒板に向かう、理論派タイプ。もう一つは、フェルトペンとホワイトボードを使う、どちらかというと応用数学系の人である。 その伝でいうと、時枝正は第三のタイプの数学者である。しかもこの第三のタイプは、世界広しといえども彼一人だけの可能性がある。 時枝は仕事道具をどれも煎餅の空箱から取り出すのだが、箱は「すべて同じブランドのもの」なのだそうだ。たとえばその中身は、見かけはそっくりなのに、転がるものと転がらないものがある二つの不思議な構造物。ひもや輪ゴム、クリップの扱い方は、まるで
最新研究で「階級を越えた友情」の恩恵が示される 貧しい家の子でも、金持ちの子と友達になれば、将来は稼げる大人になれる 高校時代に裕福な家庭の子と友人になったことが助けになったと語るマリ・ボウイ Photo by Marissa Leshnov/The New York Times 貧しい家庭に生まれた子供は大人になってからも経済的に苦しむ可能性が高い──。いわゆる貧困の連鎖であり、そこから抜け出すのは簡単ではないと言われてきた。 だが8月1日に科学誌「ネイチャー」に掲載された最新の研究で、その貧困のループから脱却するカギが示された。貧しい家に生まれても、裕福な家の子と友達になることだ。 研究対象となったのは25~44歳のアメリカ人の84%にあたる7200万人で、この手の研究では最大規模。彼らのフェイスブック上の交友関係を分析したところ、貧しい家に生まれた子供でも、貧困層と富裕層のつながり
イリノイ大学医学部薬理学科 Assistant Professor 米国NPO法人 海外日本人研究者ネットワーク(UJA)理事 日本の国民は皆勤勉で真面目で働き者だ。ノーベル賞受賞者も多数輩出し、一昔前までは科学立国になることを期待されていた。ところが論文引用数や大学ランキングなどの数値で見る日本の地位は下がる一方だ。なんでこんなことになってしまったのか、ここから巻き返すにはどうしたらいいのか、そう考察する記事はいくつもある。当記事では在米研究者の目から見た日本の問題点と改善点について提案したい。 日本の科学の“現在地”は 1990年代後半から日本の科学の衰退は始まった。実際、データを見ると2000年過ぎからの大学からの論文数減少より前に、企業からの論文は1996年から減少傾向になっている。 そして、Top10%被引用論文数で見ると、1997-1999年頃は世界4位だったが、その後、どんど
3年前、ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑さん。 体を守る「免疫」の仕組みの研究に長年取り組み、がんの治療薬の開発に貢献するなど世界をリードする成果をあげ続けてきました。 その本庶さんの研究室には1つの伝説がありました。 かつて、本庶さんが与えたテーマと全く関係ない「魚」の研究で、あの世界的科学雑誌「nature」の表紙を飾った若手研究者がいたらしい。 しかも実験していたこと自体、本庶さんに内緒にしていたらしい。 なぜこっそり“裏実験”を行っていたのか。 当時の若手研究者に真相を尋ねると、とかく埋もれがちな若い才能やアイデアを伸ばすヒントが見えてきました。 (大阪拠点放送局 記者 稲垣雄也) その研究者に会いに、大阪大学の研究室を訪ねました。 生命機能研究科の近藤滋 教授です。 近藤さんが本庶研に所属していたのは、25年ほど前。 当時の研究室は本庶さんの指示のもと、グループごとにテーマ
政府から独立した立場で政策提言をする「科学者の国会」とも呼ばれる「日本学術会議」の新会員の任期が、1日始まった。しかし、菅義偉首相は学術会議が推薦した候補者105人のうち、6人を任命から外した。その一人の加藤陽子・東京大教授が、毎日新聞にコメントを寄せた。 加藤教授は小泉純一郎政権での政府の公文書管理についての有識者懇談会に参加し、公文書管理について政権にアドバイスをしてきた日本の第一人者だ。2010年に設置された内閣府公文書管理委員会委員だったほか、現在は「国立公文書館の機能・施設の在り方等に関する調査検討会議」の委員を務める。皇室にも熱心な読者を持つ、日本近代史の有力な研究者でもある。 ◇ 今、多くのメディアは、任命されなかった私たち6人に「なぜ任命されなかったのか」を尋ねている。いかなる研究者の、いかなる研究内容が官邸に忌避されたのかを、国民の知る権利についての付託に応えるために探る
研究を進めるとき、自分の喜ぶ結果がでたら、ほとんど確実にミスがある。これは、研究者にとって普遍的な現象だと思う。また、間違ってない発見をしても、冷静になるとつまらないことも多い。新しくて意味のあることを見つけるのは想像以上に困難であり、精神がすり減るようなことを繰り返し経験する。しかし、そういうことは本気で研究をしないと分からない。研究者になる前の僕が一人で研究を始めたとして、それを意識できたかどうかは分からない。真剣に科学にとりくむ環境があってこそ、そういう経験が「普通に」できたのだと思う。 某細胞の件。日曜日には、意図的な捏造の可能性が高くなって呆然とした。しかし、そうする理由が全く理解できなかった。今日の学位論文のイントロには驚いたが、落ち着いてくると何となく分かってきた。要するに、O氏の周りには研究環境がなかったのだ。結果を出さないといけないプレッシャー云々とか、そういうのに駆動さ
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