このエントリとその続編では,「通信モデル」から「推論モデル」への移行について,簡略におはなしします.今回は,まず通信モデルについて. 『言語における意味』の訳者まえがきでほんの少しだけ書いたように,いまの言語学では,伝達(コミュニケーション)についての考え方が旧来の「通信モデル」(「コード・モデル」または「メッセージ・モデル」)から「推論モデル」に移行しています. 『言語における意味』にしても,この第3版ではいくらか推論の過程を取り込んだ通信モデルを第1章で解説していますが,第2版では典型的な通信モデルを解説していました(のちほど旧版の訳文をごらんいただきます). この文章の要点: 通信モデルによれば,伝達とは,送信者がコードを参照してメッセージを信号に符号化し,受信者が同じコードを参照してその信号を復号しメッセージを再現するプロセスであり,送信者のメッセージとそっくり同じものを受信者が取