覚えているだろうか。昨年4月、長野での北京五輪聖火リレーでランナーを務めた卓球の福原愛選手の前に飛び出したチベット人がいたことを。 男はチベット旗を掲げて「フリー・チベット(チベットに自由を)」と叫び、その場で取り押さえられた。そのシーンは、全世界にテレビで生中継され、本紙はじめ多くの新聞の1面トップ写真となった。 捕まった後、警察に悪態をついたり、暴れたりしたのであれば、心に残ることもなかっただろう。しかし、あの男はただ泣いていた。その理由が聞いてみたくて、人づてに台北市内に住む男を探り当て面会を求めた。私が日本人記者だと分かると、快諾してくれた。「日本の方々には心からおわびしたいと思っている」からだという。 男は台湾籍のチベット人、タシ・ツーリン氏(43)。台北でアンティーク商の傍ら、「チベット独立」を目指す「チベット青年議会台湾分会」の主席を務め、チベット問題を語る講演活動も行ってい