あの日から私たちは探し続けている。なぜ、男が凶行に走り、未来ある36人の人生が不条理に奪われたのかを-。未曽有の惨劇となった京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判が2023年9月5日に始まる。審理が事件の深淵(しんえん)に迫る時、どんな真実が浮かび上がるのか。裁きの場を糸口に命の実像、刑罰の意味、社会の矛盾をシリーズで考えたい。 連載「理由」は、こんな一節で始まる。取材班は、審理の推移に注視する一方で、法廷から浮かび上がった疑問を掘り下げた。 連載は、公判を精緻に記録した一連の記事とともに24年3月、関西を拠点にした優れた報道活動を顕彰する「第31回 坂田記念ジャーナリズム賞」第1部門(スクープ・企画報道)に選ばれた。 第1部 裁きの時 2019年7月18日の事件発生から4年余りがたち、青葉真司被告(45)の公判が迫っていた。遺族が抱え続ける苦悩とともに、凶行の余波をつづり、23年9