日本を強く、元気にするために、ITは何をなすべきか。2011年8月24日に行われ、「ITpro EXPOステアリング・コミッティ宣言」を採択した会合で、大手ユーザー企業6社のCIO(最高情報責任者)に続き、主要ITベンダー8社の経営者が、震災後の新しい日本をITで描き、支える決意を表明した。
みずほ銀行が3月に引き起こした大規模システム障害は、東日本大震災の義援金が引き起こした「天災」ではなく、明らかに「人災」だ。しかもシステム障害の原因は、現場の担当者の不手際といった人為ミスにあるのではなく、経営陣のITガバナンスの欠如にある。同行が5月に発表した調査報告書(pdf)が、そのことをはっきりと物語っている。 日経コンピュータでは6月9日号で、みずほ銀行が第三者委員会「システム障害特別調査委員会」に依頼して作成した調査報告書を独自に読み解き、分析した。その結果、みずほ銀行のシステム障害は、30の「不手際」が積み重なることで長期化したことが分かった(表)。 30の不手際の詳細は、日経コンピュータ6月9日号の「緊急特集」としてまとめたほか、同記事は6月13日から1週間に分けてITproにも転載する予定である。みずほ銀行のシステム部門が、多くの人為ミスを犯したのは事実だ。混乱のさなか、
1980年代、筆者が高校生・大学生だったころに「C言語がすごい」という話を友人から聞いていた。しかし、当時の筆者が触れていたのはMSXパソコンのBASICと大学の汎用機のFortranくらいだった。C言語をやっと手に入れたのは、1992年の暮れである。清水の舞台から飛び降りるような気持ちでBorland C++の大箱を買って帰った。 それから20年近くが経過した今でも、C言語は「最強のプログラミング言語」と呼ぶべきポジションを確保し続けている。UNIXオペレーティングシステムとC言語が世界に与えたインパクトの大きさは、実に大きなものがあった。 ただ、C言語を学習したり評価したりする際には、C言語の大きな欠点を知っておく必要があるだろう。筆者が考えるその大きな欠点とは、「文字列の扱いが非常に面倒」であることだ。 「バッファオーバーフロー」を回避するのは大変 例を示そう。図1はC言語で記述した
「システム管理者感謝の日」という日があるのをご存知だろうか。英語では「System Administrator Appreciation Day(以下,SysAdmin Day)」。毎年7月の最後の金曜日が感謝の日としている。今年は,明日7月31日(金)がそうだ。 システム管理者は1年のうち,364日は感謝されることがない。この日だけはシステム管理者の労をねぎらおう---。こんな思いから,米国在住のシステム管理者Ted Kekatos氏が2000年に「SysAdmin Day」を提案し,今年で10年目を迎える。英国,スペイン,オランダ,ドイツなど欧州を中心に賛同者が普及活動を展開。日本でもシステム運用管理ソフトを開発・販売するビーエスピーが2007年から関連イベントを開催している。 「設計者の日」や「開発者の日」ではなく,なぜ「システム管理者の日」なのか。その背景にはシステム管理者の報われ
IT環境では今,“仮想化”が流行っている。OSやアプリケーションが動作する「仮想マシン」のことだ。以下では,仮想マシン技術はどういう方向に向かっていくのか,仮想化技術の今後について考えてみる。 仮想化の一つの定義は,「サーバー,ネットワーク,ストレージなどの物理的なリソースを隠して,論理的な単位として提供する技術」である。現在は主に,WindowsやLinuxで稼働する「VMware」や,Linuxで動く「Xen」などのように,仮想化技術を単一のソフトで実現している。 まず最初に,仮想化のメリットについて説明しておこう。仮想化技術の用途は個人と企業とで少し異なる。個人レベルでは,Windows上でLinuxを動かす,ベータ版のOSやソフトウエアを試す,ソフトウエアの開発に役立てる,といった用途に使われる。 企業で仮想化ソフトを使う主なメリットは,物理的なサーバーのコスト削減である。一般にフ
筆者は3年前、ITproで「ついにWindows開発から離れた『闘うプログラマー』」というコラムを書きました。Windows NTのアーキテクトで、ドキュメンタリー「闘うプログラマー」の主人公であるデイビット・カトラー(David Cutler)氏が2006年7月をもって,Windows OSの開発部門を離れたという記事です。実はこれは誤報でした。今回はこのことをお詫びしたいと思います。 3年前のコラムでは、カトラー氏がWindows OSの開発部門からオンラインサービス「Windows Live」の開発部門に異動したことを指して「Windows OSの開発現場を離れた」と表現していました。当時の筆者にとってWindows OSとは、カトラー氏が設計したWindows NTの系譜を引き継ぐ「Windows Vista」と「Windows Server 2008」のことでした。Windows
「Chrome OSはWindowsに対抗するものではない」――。2日前の本欄と同様な書き出しで恐縮だが、記者もこう考えている。より正確に言えば、グーグルからすれば対抗する意味がないのである。 では、グーグルはなぜわざわざパソコンのOSを開発するのか。ここでは2日前の記事とは別の観点から、このテーマに対する記者の考えを述べる。 97%が広告収入 改めて言うまでもなく、グーグルは広告企業である。2009年第1四半期(1~3月)の業績は、売上高が55億1000万ドル。内訳は傘下のWebサイトによる売上高が37億ドルで総売上高の67%、「AdSense」などを通じたグーグル外のWebサイトによる売上高は16億4000万ドルで同30%を占める。総収入の97%を、Webの広告から得ているわけだ。グループウエアの「Google Apps」や検索アプライアンスといった企業向け事業も伸びてはいるものの、全
このところ,インターネットで「オープンソース的」という言葉を巡る議論が交わされていた。この言葉に関する議論が,オープンソースの当事者,第一人者によってネットで展開されていく様は,記者自身の思い込みを正し,理解を深めさせてくれたとても印象深いものだった。 オープンソースは無料ではない きっかけは,梅田望夫氏のブログのエントリだったと思う。梅田氏が近著「シリコンバレーから将棋を観る」を自由に翻訳してよいと宣言したところ,大学生の薬師寺翔太氏をリーダーとするボランティアの英訳プロジェクトが発足。10人のメンバーにより300ページの著書が実質5日間で英訳された(関連記事:梅田望夫氏の本「英訳プロジェクト」リーダーに聞いた成功のツボ)。現在,フランス語やイタリア語など,さまざまな言語への翻訳プロジェクトも立ち上がっている。この出来事に感銘を受けた梅田氏は,「オープンソース的協力が成立する要件について
「日経CG」1999年4月号の久夛良木健氏インタビュー記事。久夛良木氏はこのインタビューが掲載された1999年4月にSCE社長に就任した 1999年3月,「プレイステーション2」(PS2)が発表された直後に,筆者はソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の久夛良木健氏にインタビューする機会を得ました。久夛良木氏はSCE社長に就任する直前でした。東京・赤坂にあるSCEのオフィスで,約1時間半にわたってお話を伺った記憶があります。「プレイステーション3」(PS3)の発売が11月11日に迫る今,当時のインタビューを振り返りたいと思います(なお,このときのインタビューは休刊してしまった「日経CG」誌の1999年4月号に掲載されました)。 7年半前のインタビューで久夛良木氏が何よりも強調していたのは「PS2の超高性能な演算能力によってゲームのパラダイムが変わる」ということです。具体的な発言を
この記事はまつもとゆきひろ氏が,2008年3月24日に発売した日経ソフトウエア2008年5月号の特集「はじめてのプログラミング」向けに著したものの再掲です。記述された内容は,執筆当時の情報に基づいています。 この手紙を読まれるころには桜の便りも聞かれているのではないでしょうか。プログラミングに挑戦したいというお話を聞き,大変うれしい限りです。 思い返せば,私がプログラミングの道に分け入ったのはまだ中学生のとき。早くも20年以上の年月が流れてしまいました。プログラミングに携わってきた時間は長いものの,常にその密度が高かったとは言い切れないようにも思います。でも,先輩として,いくらかはお役に立てる言葉を残せるのではないかと思い,筆をとります。 「プログラミングとは何か」。私に言わせれば「人生そのもの」です。私以外の人はそれぞれ別の答えを持つでしょう。ただ,少なくとも言えることは,プログラミング
Linus Torvalds氏は2009年3月23日(現地時間),Linuxカーネルの新版2.6.29を公開した。Linus氏が最も大きな変更としているのが,起動時に表示されるロゴがペンギンのTuxからタスマニアン・デビルのTuzに変わったことだ。 Linus氏は,TuxからTuzへの交替は一時的なものであるとしている。ただし,いつまでなのかについては明言していない。 Tuzはもともと,オーストラリアで開催されたlinux.conf.au 2009のマスコットである。Linuxカーネル開発者のJonathan Corbet氏によれば,タスマニアン・デビルが伝染性の腫瘍により絶滅の危機に瀕していることを訴えるため,linux.conf.au 2009に出席したLinus氏がTuzへの交替を決めたという。 Linuxカーネル2.6.29ではそのほか,いくつかのドライバーのアップデート,m68k
長すぎるFlash Playerの自動更新間隔,“隠し設定”でカスタマイズを デフォルトの30日間ごとの間隔を短くしセキュリティ・リスクを低減 ある企業のシステム管理者から『Flash Playerに,またセキュリティ・ホールが発見されたようだ。しかし,社内にようやく定着したMicrosoft Updateとは異なり,Flash Playerのアップデートはなかなか社内に徹底できない。対処方法をアドバイスしてほしい』と相談を受けました。 「Adobe Flash Player」には繰り返しセキュリティ・ホールが発見されてきましたが,2009年2月24日にも米アドビ システムズは「APSB09-01 Adobe Flash Playerのセキュリティ脆弱性に対処するためのアップデート公開」というセキュリティ情報を公開しました。その中では,各プラットフォームで最新版Adobe Flash Pl
グーグルがGmailでころんだ。しかも続けて二度も。クラウド・コンピューティングの勃興を苦々しく思っている日本のITベンダーの中には、「ほら、見たことか」とほくそ笑んでいる人もいるだろう。だが、したり顔をしているだけではダメだ。たった1社が引き起こす障害が世界中に迷惑を撒き散らすのは確かに問題だが、ビジネスの話としては全くの別問題であるからだ。 今回のトラブルでは、Gmailが2時間半にわたって停止した。企業向けの有償サービスGoogle Apps Premier Editionも利用不能に陥った。クラウドとしての「規模の経済」を追求しているグーグルは、無償版のGmailと企業向けの有償版で同一の基盤を使っているから、当然そうなる。まさにクラウドの最大の弱点が露呈した形だ。 そう言えば、1カ月前に発生した前回のトラブルでは、検索サービスのトラブルに巻き込まれてGmailにも障害が発生した。
米Evans Dataは2009年2月9日,新興市場のIT開発技術者に関する調査結果を発表した。中国,インドとラテンアメリカの開発者の5人に1人がRubyを利用しており,この比率は北アメリカまたは西ヨーロッパのRuby利用率と比較して2倍であるという。 調査は,中国,インドとラテンアメリカ,東ヨーロッパのIT開発者約400人を対象に行った。調査結果によると21.3%の開発者がプログラミング言語の一つとしてRubyを使用している(図1,表1)。1人の開発者が仕事全体の中でRubyを利用している割合は,10~19%が最も多い。全体のうち10.8%の開発者が,作業時間の10~19%でRubyを使用している。 特にインドとラテンアメリカでRuby利用率が高く,インドでは3人に1人が,ラテンアメリカでは4人に1人以上がRubyを利用している(図2)。「新興市場ではスクリプト言語の利用率が高い。新興市
オープンソース・ソフトウエア(OSS)開発者のAaron Bockover氏は現地時間2009年2月12日,Linuxデスクトップ上で「Windows Media」コンテンツを再生するためのソフトウエア「Moonshine」(旧名称は「Pornilus」)を公開した。Webブラウザ「Firefox」と,メディア再生/リッチ・インタラクティブ・アプリケーション(RIA)表示用Webブラウザ・プラグイン「Silverlight」のオープンソース版である「Moonlight」の機能を利用している。 Moonshineは,Linux版Firefox用のプラグイン・ソフトウエア。Moonlightを使い,Windows Mediaコンテンツ再生とWindows Media用JavaScript APIエミュレーションという機能を提供する。Webページに埋め込まれたビデオをFirefox内で視聴できる
ユニ・チャームは2009年1月14日、社内で利用するメール・システムを米グーグルが提供するサービス「Google Apps Premier Edition(グーグル・アップス・プレミア・エディション)」に移行させた。保存可能なメールの容量を大幅に拡大するなど社員のメール利用環境を向上させただけでなく、約6800人いる国内外のグループ各社に所属する全社員のメールのドメインを「@unicharm.com」に一本化していく。現時点では国内の約3000人が同サービスを利用している。 Google Apps Premier Editionは、グーグルのウェブメール・サービス「Gmail」にスケジュール共有や会議室予約などの機能を加え、99.9%の稼働率を保証したものだ。電話などによる24時間365日のサポートも受けられる。 ユニ・チャームでは、従来は自社でメール・システムを運用。セキュリティーを考慮
富士通と米Red Hatは2008年末,提携の強化を発表した(関連記事)。両社はRed Hat Enterprise Linuxのアップデート・リリース単位のサポート期間を拡大。富士通はこのサービスを提供する世界で初めてのパートナ企業となる。Linuxへの取り組みについて富士通のサーバシステム事業本部長 豊木則行氏らに聞いた。 左からサーバシステム事業本部 Linuxソフトウェア開発統括部 プロジェクト部長 山崎博氏,Linuxソフトウェア開発統括部 シニアスタッフ 杉山憲明氏,Linuxソフトウェア開発統括部 統括部長 長谷川就一氏,事業本部長 豊木則行氏,本部長代理 泉水澄氏,Linuxソフトウェア開発統括部 主席部長 黒羽法男氏,Linuxソフトウェア開発統括部 シニアスタッフ 伊達政広氏 富士通では何人の技術者がLinuxカーネルの開発に従事しているのか。 開発のほかに,検証やドキ
大規模,複雑,厳しい納期――。昨年秋に完全統合したJAL/JASの情報システム。成功を収めたプロジェクトの裏に,見積もり精度の高さがあった。プロジェクト・マネージャ(PM)を務めた岡村正司氏に,どのように見積もったのかを聞いた。(聞き手は本誌 池上俊也) JAL/JAS統合とはどんなプロジェクトだったんでしょうか。 岡村:昨年10月に完全統合しましたが,日本航空(JAL)と日本エアシステム(JAS)の約160のシステムを,JAL側のシステムに片寄せするものでした。工数は全体で1万2000人月,規模は8000万ステップと,とんでもなくデカいものです。IBMが手掛けてきた案件の中でも世界最大級でした。 時間の制約も厳しい。2002年初頭に始まったプロジェクトは,2年間で中核部分をすべて統合しなければならない。失敗は許されませんでした。 岡村さんがPMとして招かれたときの様子を聞かせてください。
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