2010年、米国に潜伏していたロシアのスパイ10人がFBIに一斉摘発される事件が発生。「隣人がスパイだった」という事実は、米国社会に大きな衝撃を与えた。 逮捕されたスパイを両親に持つある兄弟は、好奇の目にさらされながらも、事件後ひたすら沈黙を守ってきた。だが6年のときを経て、ついに事件の真相について英紙に語った。 ロシアの諜報活動の内情と、それに翻弄された2人の兄弟の心情を赤裸々に描いた傑作ロング・ルポルタージュ。 2010年6月27日は、ティム・フォーリーの20歳の誕生日だった。 息子の誕生日を祝おうと、両親はティムと弟のアレックスを連れて、マサチューセッツ州ケンブリッジの自宅近くにあるインド料理店に出かけた。兄弟は2人ともカナダ生まれだが、この10年は米国で暮らしていた。 父のドナルド・ヒースフィールドはハーバード大学ケネディ政治学大学院を出て、ボストンのコンサルタント会社で管理職に就