かつて奴隷取引の拠点だった米南部サウスカロライナ州チャールストン。ここで昨年6月、白人至上主義の男に射殺された牧師ら黒人9人の追悼式があった。 大勢の参列者を前に、黒のスーツに身を包んだオバマ大統領が壇上に立った。 力強く進んでいたスピーチが、突然止まった。 沈黙が10秒ほど続いた。 犠牲者の同僚であるロニー・ブレイルスフォード牧師(57)が前方をうかがうと、オバマ氏は5メートルほど先の演台で下を向いていた。 「何を言おうとしているのかな」。そう思った直後、オバマ氏は伴奏なしで歌い始めた。 アメージング・グレース/なんと甘美な響き/人でなしの私を救って下さった たちまち総立ちの大合唱に。天を見上げ、涙を流す人もいた。ふだん冷静に振る舞う大統領が、この日は犠牲者一人ひとりの名を、叫ぶように読み上げた。 「事件直後の遺族の行動から、大統領はこの歌を選んだと思う」。ブレイルスフォードさんは振り返