95年の人生で、国葬を経験するのは天皇や皇族を除けば5度目となる。京都府八幡市の元高校教諭、小畑哲雄さんは静かに、きっぱりとした口調で語った。「人の死を国や政治のために利用するのは絶対にあかん」。27日に近づいた安倍晋三元首相の国葬。戦前、戦中、戦後を生きてきた古老の目に映る国葬の「危うさ」とは何なのか。 国葬で戦意高揚、若者を戦地に 校庭に丸刈りの男子生徒約1200人が整列した。1943年6月5日、旧制熊本県立熊本中学(現県立熊本高校)。鈴が鳴り、教師が「黙とう!」と呼び掛けると、生徒らは静かに目を閉じた。当時15歳の小畑さんもそこにいた。 この日、東京の日比谷公園では元連合艦隊司令長官、山本五十六の国葬が営まれていた。 旧日本海軍を率いた山本は、太平洋戦争で真珠湾攻撃などの作戦を指揮し、同年4月に戦死。26年に制定された「国葬令」は国家に「偉勲のある者」に対し、天皇の特別な意向として国