マッコウクジラの腸内で作られる結石であり、世界的に有名な香水「シャネル5番」の材料にも使われた「竜涎香」(りゅうぜんこう、アンバーグリス)。鯨の体内で作られたこの稀少な香料を、大海原からひとかけ見つけることは難しい。 あまりにもレアな竜涎香はどのように発見されるのだろうか。職務上ほとんどマスコミに語ることがないディーラーに、英紙「ガーディアン」が話を聞いた。 竜涎香は「鯨の香り」 フランス・ブーズはキッチンのテーブルに座り、並べられた石のような何かを調べている。細く鋭いナイフで順番にその物体を削ると、5つの粉の山ができた。それらは光沢ある白だったり、深いキャメルだったり、タールのような黒だったりする。 彼はろうそくに火をつけ、炎で太い針を焼いた。その針を粉につけると、煙がたち、泡が出て、てかてかした液体が出てくる。ブーズは前屈みになり、目を閉じ、わずかな煙の渦を左の鼻腔に誘導した。 「甘く