東京・麻布十番。平日の昼間に次々と客が訪れるスナックがある。客の年齢や性別はさまざま。ビジネスパーソンや経営者、学生、子どもを連れた女性……。客たちが並んで座るカウンターの中で、笑顔で話を聞いているのが「ママ」だ。 この場所は「スナックひきだし」という。人材育成研修やキャリアカウンセリングを手掛ける企業「株式会社ヒキダシ」が週1回、運営している。2016年にヒキダシを起業した木下紫乃さんが「ママ」を務める。17年6月に始めてから、口コミやSNSを通じて延べ500人が来店した。 なぜ昼間からスナックに人が集まるのか。ここで何をしているのか。スナックひきだしが目指す「場」について、木下さんに話を聞いた。 “人のつながり”が生まれる場 「もう会社辞める!」 勢いよく店に入ってきた女性は、ママに愚痴を吐き出した。話を聞いてみると、女性は大企業に勤めているが、業務内容や会社の風土が自分に合わない様子