「あのね、今日ここをケガしたの」 まりんちゃんは小学校の帰り道、必ず身体のどこかしらを指差して訴えてくる女の子。 海が好きな子なのでまりんちゃんとしておこう。 彼女は娘の小学校のお友達で、いつも不安気な表情をしている。 「どこでケガしたの?」 そう聞きながら指差しているところを見ても、だいたいは傷や打撲の跡は見当たらず、あっても全くたいしたことはなさそうなのだが、話を合わせて心配してあげると多少は気が済むようだった。 私を見るなり足を引きずって歩きはじめることもよくあった。大げさに痛がったりしゃがみ込んだりしながら帰り道を進むので、知らないお婆さんに「あの子だいじょうぶなの?」と咎められるように声をかけられたこともある。 「だいじょうぶです。ちょっとかまって欲しいだけなので、本当はケガなんかしていませんから」 私がまりんちゃんに気付かれないよう小声で言うと「あら、そうなの」と安心してその方