優れた散文作品に贈る第49回大佛(おさらぎ)次郎賞(朝日新聞社主催)は、ノンフィクション作家・星野博美さんの『世界は五反田から始まった』(ゲンロン)に決まった。一般推薦を含む候補作の公募、予備選考を経て、最終選考で委員5人が協議した。贈呈式は来年1月27日、東京都内で朝日賞、大佛次郎論壇賞、朝日スポーツ賞とともに開かれる。 ■祖父の町工場と、地続きだった戦争 手記・証言にみる庶民の知恵 削り出されたばかりの真鍮(しんちゅう)製のネジを一つひとつ、古新聞に包んで木箱に詰めていく。幼いころ、家でそうした「お手伝い」をしたことをよく覚えているという。東京・五反田界隈(かいわい)で、祖父が昭和の初めに創業した町工場の娘として生まれ育った。 受賞作は、そんな星野さんが祖父の残した手記に導かれて、なじみ深い五反田や戸越銀座の街を歩き、家族の来し方をたどった一冊。「大佛次郎賞と聞いて、まさかと驚きました