まず結論、脳の本質は「予測」になる。 脳とは、過去・現在・未来に生じる不確実性を最小化する推論エンジン というのが、本書の主旨だ。 私たちは、感覚データそのものを見たり感じたりすることはできない。知覚できるものは、知識(生成モデル)に基づき「予測」した世界になる。身体の外だけでなく、身体内部の環境を予測するため、感覚データと予測との間に生じる誤差(予測誤差)を最小化するサイクルが稼働している。 私たちはよく、「現在の状態から未来を推論する」というが、その現在ですらリアルタイムに把握しているわけではなく、過去の推論に拠るものだ。刻々と変化する環境において、脳は、ひたすら予測と後付け(予測の上書き)を続ける。 「現在」とはそこにあるものではなく、私たち一人ひとりの脳により決定されたもの なのだという。 ベースは、神経科学者カール・フリストンの「自由エネルギー原理(Free Energy Pri
