20歳になれば、『大人』という力を手に入れることができると思っていた。 ――というのは、まあ比喩でしかないのだけれど。ともかく、社会的に「成人」として認められ、お酒も煙草も許されて、自分の身ひとつで世間を渡り歩き、手に職つけて稼いだお金を自分の自由に使うことができるのだ――と、そう思っていたのだ。 ところが、今となってはそんな幻想は遥か遠く、現在はただただ自分の無力さを痛感するだけの日々。「社会」なんてものは本当に不確かで、曖昧模糊としているくせに残酷で、『大人』は思っていた以上にカッコイイものじゃなかった。 いや、そもそも『大人』なんていなかった。どうしてそれを守るべきなのかも知れない「規範」や「マナー」を疑いもなく信じ、成功者を神と崇め、自分の正しさを証明するべく他人を蹴落とす人ばかり。……そういうのは声の大きな一部の人で、中には “カッコイイ” 人もいると知ってはいるけれど。 『大人