コーヒーを注文したところでメールが来た。旅行先で知りあった人からだった。私はメール書いていい、と訊いてから、その場で返信を出した。北海道いいねー。私もまた旅行したいと思っています。今度は海外がいいな。関東に来るときは、よかったら連絡してください。笑顔の絵文字。 何を書いたのと彼が訊くので、文面をそのまま朗読した。彼は縦に長いカップにたっぷり入ったコーヒーの、水面の微細な泡をひとつずつそっと壊すように飲んでから言う。絵文字使うんだ。そんなに親しくない人には使う、と私はこたえる。親しくなくて相手が使ってて私が使ってないとすごく無愛想に見えるから。絵文字苦手だから、親しい人だとそうことわって使わないか、そもそも相手も使わないか、なんだけど。 なるほどと彼はつぶやき、なんだかずいぶん楽しそうに打ってたね、と言う。私は首をかしげる。彼は言う。 もう会わないかもしれない相手なのに、って思ったんだ。旅先
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