東京の片隅で万引きをする父と幼い息子。彼らは1人の少女を救い出し、家族に迎え入れる。是枝裕和監督が日本の現状を世界にまざまざと見せつけて、21年ぶりに日本にパルムドールをもたらした『万引き家族』が描いているのは、日本という国が“見て見ぬ振り”をしてきたことのすべてであろう。 パルムドールを受賞した是枝裕和監督 この映画が注目を集めたことで、どうやらネット上の一部では「日本の恥を世界に晒している」などという揶揄があがったらしいが、そのような恥さらしな発言に目を向けるのは時間の無駄だ。工事現場で日雇いで働く父、クリーニング店で働く母、JK見学店でアルバイトをする母の妹、月6万円ほどの年金を受給する祖母。そしてどこか様々な感覚が麻痺してしまったかのようでありながら、時に無邪気な表情を見せる少年と、本当の両親からネグレクトされた少女。 2004年に同じくカンヌを沸かせた是枝作品『誰も知らない』では