武田 安恵 日経ビジネス記者 大学院卒業後、2006年日経ホーム出版(2008年に日経BPと合併)に入社。日経マネー編集部を経て、2011年より日経ビジネス編集部。主な担当分野はマクロ経済、金融、マーケット。 この著者の記事を見る
橘木俊詔(たちばなき・としあき)氏 京都女子大学客員教授、京都大学名誉教授。1967年小樽商科大学卒業後、69年に大阪大学大学院経済学研究科修士課程修了。73年、米ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。98年、京都大学経済学博士。フランス国立統計経済研究所(INSEE)、経済協力開発機構(OECD)エコノミスト、京都大学経済研究所教授、IMF(国際通貨基金)客員研究員、京都大学大学院経済学研究科・経済学部教授などを経て現職。専門は労働経済学、応用計量経済学、日本経済論。数多くの英語・日本語・フランス語による経済学術論文・書をはじめ『日本の経済格差:所得と資産から考える』、『格差社会――何が問題なのか』(岩波新書)、『女女格差』(東洋経済新報社)など一般向け書籍を多数出版。(写真=菅野勝男、以下同) 日経ビジネスオンラインは2015年2月6日に、トマ・ピケティ仏パリ経済学
イスラム過激派組織「イスラム国」による日本人人質殺害事件を受け、日本の安全保障の在り方を巡る議論がにわかに熱さを増している。 しかし、戦後70年を経て世界が大きく変わりつつある今の状況にあっても、「依然として思考停止を続けている日本人の意識こそが根本的な問題」と指摘してきたのが、政治経済の論客として知られる中野剛志氏だ。 近刊『世界を戦争に導くグローバリズム』で「世界の覇権国家としての地位を失いつつある米国と同盟関係を深化させても意味はない。日本はエネルギー安全保障、食糧安全保障を含め、安全保障に対する考え方を抜本的に見直すべきだ」と指摘し話題を集めている。その考え方について聞いた。 (聞き手 石黒 千賀子) イスラム過激派組織「イスラム国」による日本人及びヨルダン人の人質殺害は日本中を震撼させました。同時に、日本の安全保障の在り方を巡る議論がにわかに熱くなっていますが、今回の件をどうご覧
格差解消の処方箋として「富裕層の資産や所得に対する累進課税」などを提唱し、一世を風靡した仏パリ経済学校のトマ・ピケティ教授。1月末に来日するや連日の講演や取材に追われ、「経済学界のロックスター」とも称される人気ぶりを見せつけた。伝統的な経済理論を身に付けたトップクラスの経済学者でありながら、20世紀フランス現代歴史学のアナール派における巨匠リュシアン・フェーヴルやフェルナン・ブローデルらの思想を受け継ぐ、フランス流エリートだ。 アナール派は、民衆の文化生活や経済などの社会的背景を重視、歴史を言語学、経済学、統計学、地理学など他の学問の知見を取り入れながら分析し、歴史学に革命を起こした学派だ。それまでの歴史研究で主流だった、政治史や事件史、人物の研究が中心になる手法とは異なり、おびただしい数の数値や事実を集め、地球的な規模で学際的な分析を重視する。 ピケティ教授はそうしたフランス発の手法を、
宅配便最大手のヤマト運輸は1月22日、同社のメール便サービス「クロネコメール便」を3月末で廃止すると発表した。国の独占事業である手紙などの「信書」がメール便に混在すると、利用者が刑事罰に科せられる懸念があることが、廃止の主たる理由だ。 国土交通省の調べによると、2013年度のクロネコメール便の取り扱い数はおよそ20億8400冊。このうち9割が、法人によるカタログやパンフレットの送付で、残る1割が個人の利用だ。この個人利用のうち、3~4割が書類の送付に使われており、ここに信書が紛れ込む懸念があるという。 4月以降、これまでメール便を利用していた法人顧客向けには新たに「クロネコDM便」を提供。メール便とほぼ同じサービスを展開する。残る1割の個人利用の中でも、小さな荷物のやり取りに使っていた人に向けては、新たな宅急便サービスを2つ投入する。 1つは、現在の宅急便60サイズよりも小さい専用ボックス
これではほとんど資金運用にならない(資金調達原価と比べると逆ザヤになってしまう)ので、銀行や信用金庫の債券買いは、金利がまだ比較的残っている超長期ゾーンにやむなくシフトしている。すると、そうした満期までの期間がより長い国債の利回りも低下して、イールドカーブ(利回り曲線)はフラット化(平坦化)する。20年債利回りは節目である1%を割り込んで一時0.8%台まで低下。30年債利回りは1%に接近する場面があった。 日本の債券市場は、(1)日銀による巨額の長期国債買い入れ、(2)国内機関投資家が抱える大量の余剰資金運用ニーズに加えて、(3)欧州中央銀行(ECB)やスイス国立銀行(SNB)が導入したマイナス金利の影響で海外勢による日本国債の買いが増加しており、「おしくらまんじゅう」のような需要超過状態である。 買い手ばかりが目立つ債券市場 債券の買い手ばかりが多く、売り手がほとんど見当たらないのである
世界中で100万部を超える異例のベストセラーとなっているフランスの経済学者トマ・ピケティの『LE CAPITAL AU XXIe SIECLE』が12月8日、『21世紀の資本』(山形浩生他訳、みすず書房)のタイトルで日本でも発売された。 膨大な世界各国の税務データの歴史的分析から、例外的な時期を除き、 「資本収益率(r)>経済成長率(g)」 であり、放置すれば、資産を持つ人と持たない人の所得格差は拡大する一方であるという分析結果をピケティは導き出した。 世界で最も所得格差が大きいのは米国である。その所得階層の1%に富が集中している事実はよく知られているが、実際には、1%の中でも0.1%の層にますます富が集中していく傾向が強まっている。 日本はどうか。ピケティ同様の手法の税務データの分析から「ほぼ同じ傾向がある」と結論付けたのが、筆者の岡直樹氏(前国税庁長官官房国際課税分析官)だ。 財務省財
欧州経済の優等生ドイツの景気減速を示す様々な指標が相次いでいる。独政府も2014年と15年の経済成長率見通しを下方修正した。15年の財政均衡を約束しているメルケル政権は、その方針を変えるつもりはないようだ。だが、財政規律を維持しつつ、インフラ投資を増やすこともできる。老朽化した橋や道路など、対処すべき問題はたくさんある。 ドイツはここ数年間、低迷する欧州経済の中で例外的に輝いていた。ところがここに来て突然、頑丈なはずの同国がトラブルに陥っている。今年4〜6月期(第2四半期)にはGDP(国内総生産)が前期比マイナスとなった 。そしてさらに恐ろしいデータが相次いで発表されている。 ネガティブな景気指標が続々 8月の鉱工業生産 及び輸出高は急落。欧州経済研究センター(ZEW)が発表した、投資家心理を示す独景況指数(ZEW指数)はほぼ2年ぶりの最低水準となった 。ドイツ経済は恐らくリセッション(景
熊谷:個人消費は想定していたより若干弱めの印象です。特に自動車などの耐久消費財が思ったほど売れていません。天候が不順だったという要因もありますが、それを除いても弱いですね。 しかし、個人消費以外の項目を見ると、人手不足で滞っていた公共事業は受注ベースではかなりの勢いで伸びています。設備投資も基調として見れば緩やかに回復の方向に向かっています。海外経済も、米国は非常にしっかりしていて、中国も政策対応によって底割れの懸念は和らいでいます。欧州は心配ですが、世界経済は米国が牽引していくことになるでしょう。 4~6月期は前期比年率でマイナス7.1%成長になりましたが、7~9月期は一転してプラス4.8%成長になると予想しています。 個人消費についてもう少しうかがいます。4月の消費増税で実質所得が減少していますが、このインパクトはかなり大きいと見た方がいいでしょうか。 熊谷:増税前の駆け込み需要が20
リレーコラム「60歳と30歳でつくる」も、筆者のパートはいよいよ最終回です。 最後は、人にとって「幸せ」とは何だろうか、という大きなテーマについて考えてみましょう。 結論から先に申し上げましょう。 人間という生き物にとっての幸せは、「考える」ということによってもたらされます。「考える」ことは大脳皮質が発達した人間のみに与えられた能力です。あらゆることについて疑問を持ち、考える。社会常識を疑うところから科学は始まるのです。 人間が進化できたのは、常に「考える」ことを怠らなかったからです。人間の現世の幸せの多くは、人間自身が「考える」ことによってもたらされたのです。 ただし「考える」ことを楽しめるようになるには、「教育」が必要となります。「考える」楽しさを、教わっているかどうか。その後の人生における「幸せ」と大きくかかわってくる話です。 そこで教育です。 人間にとって教育は不可欠です。 人間社
政府の規制改革会議の作業部会が5月14日にまとめた農業改革案が全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とするJAグループに衝撃を与えている。中央会制度の廃止などグループの根幹を揺るがすような内容が盛り込まれているためだ。 政府は昨年末にコメの生産調整(減反)の見直しや農地の集約促進策などを決定。オーストラリアとのEPA(経済連携協定)の大筋合意やTPP(環太平洋経済連携協定)交渉の進展も踏まえ、国内農業の競争力強化に向けた追加策の検討を進めている。 「JA全中はシンクタンクに」 特に焦点となっているのが農協、農業生産法人、農業委員会の3つの改革。規制改革会議の作業部会は政府側の切り込み役として、これらの論点に関し高めのタマを投げかけたのだ。 改革案ではまず、農協組織に関して約700ある地域農協を束ねるJA全中を頂点とする中央会制度の廃止を提言。農協法に基づき地域農協を指導する権限をなくし、
世界的には、再生エネルギーのコストは急速に下がってきており、再エネは高いという常識は過去のものになりつつある。今回は、大規模ウィンドファームやメガソーラーが相次いで運開している米国の最新情勢を取り上げる。その低コストは衝撃的である。 日本では「コスト高」扱いだが…… 日本では、いまだに再エネはコストが高いという前提で議論が進んでいる。公式に発電コストが見直されたのが2011年に開催されたコスト等検証委員会においてであり、同年12月に発表されている。 そのコスト水準が概ね固定価格買取制度(FIT)のコストの前提となっている。買取り価格は発電原価に事業収益率(IRR)、系統への接続費用を乗せたものである。コスト委員会の結果によると(2010年モデル)、kWh当たりで原子力8.9円(下限)、石炭9.5円、LNG10.7円、陸上風力9.9~17.3円、メガソーラ30.1~45.8円となっている。F
世界の国や地域は、お互いに学び合うことはできるのだろうか。もちろん、そうすべきだろう。なぜなら、国際的なデータや経験は、政策担当者たちにとって豊富な潜在的情報源になっているからだ。今、欧州と日本の間には、共有されるべき、大きく重要な教訓がいくつかある。それは、お互いにメリットをもたらすものだ。ただし、政治家たちがそれに関心を払うかどうかは、定かではない。 政治家は、政治的に都合が良いときにだけお互いの歴史を利用し合うものだ。それゆえ、今年1月、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムで、安倍晋三首相は1914年の欧州の悲劇的な歴史を引き合いに出した。東シナ海における中国の自己主張が引き起こす脅威について、世界に警鐘を鳴らすためだ。そして欧州の政策立案者たちは今、日本が近年に経験したデフレを例に挙げて、欧州でその歴史を繰り返さないようにすることの必要性を頻繁に話している。 政府は痛みを伴う
「アジアの成長を我が社の成長に取り込む」というフレーズは、もはや経営者のあいさつの常套句になりつつある。確かにそうだ。日本企業の売上高、そして営業利益における海外比率は、もはやそれぞれ5割を超える。日本企業は続々と海外で積極展開しているように見える。しかし、個々の企業の戦略をつぶさに見ていくと、確かに海外には行っているが、あくまで国内の補完の位置付けのままだ。 国内市場はすべて耕し終えた。頭打ち、いやそれどころか右肩下がりだ。そこで新天地たるベトナム、ミャンマー、中国内陸部に市場を求める。しかし、これは国内ビジネスの海外展開でしかない。グローバル、つまり地球全体を競争市場ととらえた戦略展開とは根っ子の発想が違う。 日本の成功体験の輸出はもう通用しない 日本企業の幹部たち(昭和20~30年代生まれのオジサンたち)は、アジアの田舎町に行くと、とても上機嫌になる(私もそうだ)。なぜなら、とても懐
最近、神門教授は『日本農業への正しい絶望法』(新潮新書)という本を出された。かなりショッキングなタイトルだが。 神門:昨今、農業論議が華やかだが、ほとんどの人が農業問題の本質というのが分かっていない。そもそも農業自体が分かってない。農業の定義って分かります? 農産物を作ることではないか。 神門:農産物というのは食用動植物だ。世界中どこを探しても、野菜なり米なりを自分の体で作る人間はいない。人間が光合成するわけではないのだから。農業の主人公はあくまでも動植物だ。ところが、巷で「識者」の顔をして農業問題の解説をしている人の中で動植物の生理がわかっている人がどれだけいるのだろうか。農業の本質はものすごく単純かつ深刻だ。それは日本の耕作技能が崩壊の危機に瀕しているということにほかならない。 農家の腕がどんどん落ちている 今、野菜の栄養価がどんどん落ちて、収量変動も大きくなっている。これは農家の腕が
キレるのは良くないことは分かりました。けれども、上司が本当に冴えない人である場合は、どうすればいいのでしょうか? キレないで済む方法を具体的に教えてください。 人事ジャーナリストが返信 前回、私が会社員の頃にキレた経験や、キレる人たちの共通項を紹介しました。おさらいになりますが、以下の5項目です。 1、仕事熱心ではあるが、メリハリがあまりない 2、職場におけるコミュニケーションが十分でない 3、職場の実情を本当の意味で理解できていない 4、自分の近未来が見えていない 5、「妙な正義感」をもっている。 6、社内の「非公式な情報収集ルート」が少ない。 この中でも2と3が、特にキレてしまう人によくある傾向です。私がキレた時も、この2つを本当の意味で理解していなかったと思います。 キレたきっかけは、部長の意思決定が遅いことでした。冷静に考えてみると、当時の職場で、その仕事は私のみが経験者
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