「After the competition」 A5/36p ¥5008月30日サンフェス！10に参加します。高校三年生の関西大会が終わった後の、のぞみぞ、なかよし川のお話です。よろしくお願いいたしま

◆ ひどく寒々しく、ごうごうと音を立てて、塔の島を境に分断された夜の宇治川が再び合流するずっと向こうを、京阪の最終電車が走っていった。休日でもない宇治市はただの住宅街らしく静まり返っており、川の流れがそのなかを駆けていく。私たちの間に流れる時間だけが止まったように、緩やかに取り残...

「ところでさ、なんでわざわざそんな遠いとこ座ってんの」 「なんでもかんでも、いけませんか。部屋の隅って落ち着きますので」 「奏と私、付き合ってるんだよね」 「はい。まあ、そうですけど」 「じゃあほれ、こっちこっち。隣空いてるよ」 ぽふぽふと布団を叩く気持ち良さそうな音。 部屋の隅っ...

1. 桜の季節 / フジファブリック 2. ここだけの話 / チャットモンチー 3. エネルギヤ / the pillows 4. 季節 / 星野源 5. 手紙 / 坂本真綾 6. 赤黄色の金木犀 / フジファブリック 7. ふたり / GRAPEVINE 8. また始まるために / ...

水面を影が横切った。雨上がりのアスファルトにできた水たまりの上、すれすれを青い鳥が飛んだ。高く遠く飛んでいけるはずの彼女が、どうしてこんなに低く飛ぶのか、不思議だった。 首筋を汗が流れていく。生ぬるい風に吹かれているうちに、喉の渇きを覚えた。飲み物でも買おうと財布を開く。十円玉が...

リズと青い鳥を日本に帰って見てきました！リズと青い鳥はフランスのアヌシーで開催された、国際アニメーション映画祭で上映されたのですが、チケットがとれませんでした...。当日、アヌシーに赴き、列にも並びま

「麗奈ー。練習終わったし、一緒に帰ろ」 「あ、久美子。それが…」 「あー、ゴメン黄前ちゃん。ちょーっと高坂さんと話あるんだ。今日だけ貸してくんない？」 「え。夏紀先輩、が？」 「…そういうことなの」 「は、はぁ、別に構いませんけど……ちょっと麗奈、また何か言ったの？」 「何も言っ...

「黄前、アンタ……高坂と、その、付き合ってんの？」 「……………は？」 「だーかーら。高坂と、こっ、恋人同士なのかって聞いてんの」 「…はぁ？ い、いや違いますけど。てか優子先輩、なんでそんなこと」 「アンタたち、いっつも一緒にいるじゃない。朝練も毎日一緒だし」 「まあ、友達って...

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 指の運び。息の強さとタイミング。何度も、何度も繰り返す。 私の身体にそれらを刻み込むように。何度も、何度も。 私の身体がそれらのために存在する機械になるかのように。何度も、何度も。 私自身が音を奏でているのか、音が自らを誕生させるために私を楽器のように利用し...

頭上にはよく晴れた夜空。満天の星と円い月。 眼下には宇治の街並み。肌寒さが輝きに彩りを添える、星空のような街あかり。 星空と星空の狭間で、私たちは、他の何よりも特別だった。 だから。 私は、この夜のことを、永遠に忘れられないだろう。 「ごめん、遅れた」 夜の神社に、ぽつんと一人立...

頭上にはよく晴れた夜空。満天の星と円い月。 眼下には宇治の街並み。肌寒さが輝きに彩りを添える、星空のような街あかり。 星空と星空の狭間で、私たちは、他の何よりも特別だった。 だから。 私は、この夜のことを、永遠に忘れないだろう。 「ごめん、遅れた」 小走りでこちらに向かってきた久...

「トランペットソロの無い曲」 それが楽譜を見た時の最初の感想だった。 高坂麗奈は自分達のパートであるトランペットの楽譜を曇った瞳でなぞった。 海外の童話をモチーフにしたその曲は牧歌的に、抒情的に旋律を重ねていた。 決して簡単な曲では無い。金管楽器として、トランペットとして輝く瞬間...

ほむらよ永遠に