日本を代表する歌い手、ちあきなおみ。69~92年の活動期間でさまざまな音楽性の曲を歌ってきた彼女だが、70年代後半、ニューミュージックにアプローチしたのが『ルージュ』『あまぐも』の2作だ。これら名盤のCDは長期間手に入れられない状態になっていが、待望の再生産がなされタワーレコードで販売中、好評を博している。そんな両作の魅力について和田信一郎(s.h.i.)が綴った。 *Mikiki編集部 世界最高の歌手のひとり まず最初に申し上げたいのは、ちあきなおみは世界最高の歌手のひとりということである。楽曲解釈の深さやそれを映し出す音色表現はビリー・ホリデイやニーナ・シモンにも匹敵し、強靭なパワー感はジャニス・ジョプリンやアレサ・フランクリンに勝るとも劣らない。精密なリズム処理と日本の歌謡曲ならではの崩しを兼ね備えた節回し、そして発声技術の練達も素晴らしく、一聴してその人とわかるオリジナリティに満ち