「ChatGPT(チャットGPT)」は、人類にとって脅威か、福音か。「無防備に活用すれば、人間の知性の本質に大きなダメージを与えかねない」と警鐘を鳴らすのは、慶応義塾大学環境情報学部の今井むつみ教授です。認知科学や言語心理学を専門とする世界的に著名な研究者が、ChatGPTと「対話」した体験を踏まえ、論点を整理する寄稿。第2回となる今回は、ChatGPTが分数を間違う理由を考察します(前回は「ChatGPT活用で増殖する『間違った主張を堂々とする素人』」)。 皆さんは「ハドソン川の奇跡」という映画をご存じでしょうか。2009年1月に起きた実際の飛行機事故を基にした映画で、トム・ハンクスさんが機長のチェズレイ・サレンバーガーさんを演じました。離陸直後に野鳥の群れが機体にぶつかり、左右の両翼に設置されたエンジンがともに停止。機長は急きょ、ニューヨークのハドソン川に不時着しました。乗客乗員のすべ