子どものいない神戸市北区の夫婦が、施設育ちの知的障害児と週末を過ごした日々を本にした。少しでも家庭のぬくもりを知ってほしいと里親を続けた17年。夫は8ミリビデオで成長を記録し、妻は「親子」として暮らした日々をつづった。 滝口洋三さん(62)と芙美子さん(70)が週末里親になったのは、1994年7月。当時7歳だった和田悠貴君の里親を求める新聞記事を見たのがきっかけだった。初めての子を死産で失って10年余り。2人だけの生活が続いていた。芙美子さんが児童養護施設や保育所で保母をした経験も後押しした。 悠貴君は神戸市の児童養護施設にいた。初めて滝口さん宅に泊まった夜、芙美子さんが読み聞かせた絵本に入浴の場面があった。悠貴君は絵本のお母さんを指さし、次に芙美子さんを指さした。さらに赤ちゃんの絵、自分の順に指さして、問いかけるような表情をした。生まれてすぐ施設に預けられ、母親の顔を知らなかった。「