発達障害の過剰診断 日本の司法領域において、自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)をはじめとする発達障害に関し注目が集まるようになったのは、2000年以降だ。当初は、これらの障害の見落としが問題だった。ところが、わずか10年あまりの間に事態は急転回を示した。自閉症やAD/HD(注意欠如/多動性障害)の過剰診断と言いうるような状況が、生まれはじめたのである。 観護措置の段階で、あるいは送致先の少年院で、単にコミュニケーションが上手でないという理由から、発達歴を十分に確認しないまま発達障害を有すると決めつけられた少なくない数の事例を、私は知っている。その結果、少年が有している精神疾患が見落とされたり、狭義の児童虐待やマルトリートメント(不適切養育)の結果としての言動を、障害のせいだと誤解してしまう事態が生じている。 たとえば、躁うつ病の躁状態による落ち着きのなさを、自閉症スペクトラム障害ない