科学大国アメリカが,急速に変わりつつある。 米国はこれまで国策として科学を推進し,潤沢な予算と開かれた研究環境を用意し,世界中から頭脳を吸い上げて,科学の進歩を牽引してきた。だが1月に就任したトランプ(Donald Trump)大統領は,そのすべてを変えようとしている。 選挙戦の最中から,科学的な事実を無視した発言を繰り返してきた。1月に大統領に就任すると,環境保護局の研究者たちが地球温暖化について発信することを禁じ,環境対策や医学研究,地球観測の予算を大幅に削る方針を打ち出した。一方で宇宙開発については,自身の任期中に月や火星への有人飛行を実現するよう要請した。トランプ氏が軽視しているのは,科学の知見というよりも,データと論理に基づいて事実を見極めるという科学の考え方そのものだ。 その背後には,米国社会の変容がある。科学の進歩が産業を発展させ,生活を豊かにするという20世紀のモデルそのも
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