本稿は、2023年12月のCynic来日公演に向けて書かれたものである。Cynicは“プログレッシヴ・デスメタル”の代表格として語られることが多いが、その音楽性はメタルとしてはきわめて特異で、どちらかと言えば近年のジャズや黎明期のポストロック、Radioheadやblack midiのようなバンドが好きな人にこそアピールする側面も多い。もちろんメタルの歴史が生み出した最高のバンドの一つではあるのだが、メタルファンの間だけで知る人ぞ知る名バンド扱いされ続けるのはあまりに勿体なさすぎる。また、メタルシーン内の定評を知らずに接した音楽ファンが新鮮な切り口で語る機会も増えてほしい。というわけで、以下の作品評はむしろメタルファンでない人を想定したものになっている。お楽しみいただければ何よりだ。 なお、12月の来日公演は、『Focus』30周年を記念してその全曲が演奏される。なのでまずは本作を聴いてみ