かつてトロント大学ビジネススクールの学長を15年間務めたロジャー・マーティン教授は、著書『インテグレーティブ・シンキング』の中で、相反する考えを前にした時にいずれかを取捨選択するのではなく、それらを並立させて検証・統合する中からベストな答えが導かれる、と指摘しました。であれば、真正面から議論がぶつかるような激しい交渉の場こそ、最高の結果をもたらす「創造」のプロセスであると言えるかもしれません。ハーバード大学ビジネススクールで1993年から交渉術の講義を担当している、マイケル・ウィーラー教授の著作『交渉は創造である ハーバードビジネススクール特別講義』は、まさに「創造としての交渉」を学べる一冊です。 世の中にはあまたの「交渉術」本がありますが、本書はマクロな視点から交渉を捉えています。もちろんどのように会話を進めるべきかといった、ミクロな戦術に関する話も出てくるのですが、やはり類書との違いは