久恋(きゅうれん)の古都ローマ──その美しさ、崇高さをたたえるべく、古来さまざまな愛称がうまれ、形容されてきた。永遠の都(チッタ・エテルナ)、世界の首都(カプト・ムンディ)、百万都市、聖なる都……。それらの数ある添え名の中でも、町を実際に歩いた人にとって一番しっくりくるのが、「丘の町」という表現ではないだろうか。有名な七つの丘をはじめ市内のいたるところで多様な土地の起伏が展開し、創意に富んだ石段や斜路が設けられている。なかでも華麗な滝を彷彿とさせるスペイン階段は、『ローマの休日』でもおなじみの人気スポットだ。誰もがアイスクリームを片手に俳優気分になれる舞台装置──で、かつてはあったのだが、今では滞在は禁止され、飲食もだめ、座れば罰金までとられる始末。ここは思い切って、このいささか興ざめな名階段を一気に駆けあがろう。その先の美しき丘陵こそは、ローマ帝政期に「庭園の丘」(Collis Hort