●絵画の平面性というのは抽象的な場所にあるものだと思う。キャンバスは厚みのある物質だし、横から見ればそのような側面は明らかになる。しかし絵画は、完璧に正面から見られなくても、多少、斜めから見られたとしても、見上げられたり見下げられたりしても、平面として頭のなかで補正されて、捉えられる。絵画の平面性、絵画というものがあらわれる場としての平面は、だから、支持体の平面性に依るのではない。おそらく、絵画を絵画とする平面性は、人の頭のなかにある。表面がでこぼこと波打っていたり、絵の具が手前へと盛り上がっていたとしても、それは絵画の平面性と相反することはない。 ●それはつまり、絵画の生み出す空間のイリュージョンが、キャンバスの厚みや絵の具の盛り上がり、あるいは、表面の波打ちといった三次元的な空間性とは、もともと別のものであるということだ。描かれたものとしての「絵画」は、それを物質的に支える支持体とは(