以前、高橋富雄『平泉の世紀』に触発されて、「平泉と鎌倉」1〜4というエントリを書いたことがあるが、最近になって、松尾芭蕉が『おくのほそ道』で有名な「夏草や兵(つはもの)どもが夢の跡」という句を詠んだのは平泉の地でだったことに気づいた。 調べたところ、芭蕉が陸奥(みちのく)へと旅したのは、彼が敬慕した能因法師や西行らのゆかりの歌枕(和歌の題材とされた名所・旧跡)を訪ねるためであったらしいこと、そして、荒俣宏『歌伝枕説』という本がそういうテーマについて書いていることがわかった。ちなみに、これは『歌枕伝説(うたまくらでんせつ)』ではなく、『歌伝枕説(かでんちんせつ)』です。 図書館で借りて読んでみたが、これは実にスリリングで刺激的な本だった。もともと著者は、現地に行って歌枕の役割を再確認しようという「東北歌枕の旅」を企画したようだが、スリリングなのは、思いがけずもそこから、日本史の謎めいた領域へ