埼玉県和光市の会社員、川瀬正広さん(49)には、エスカレーターの「片側空け」をめぐる、苦い記憶がある。 東京では右側、大阪では左側を、「急ぐ人用」に空ける、あの習慣だ。 40代前半、脳卒中で倒れ、左半身にまひが残った。リハビリ中は、右手で杖を持って移動した。エスカレーターに乗る際も、左手ではベルトをつかめない。体を支えるため、右手で杖を持ちつつ、右側のベルトをつかんだ。 右側に立つと、後ろから舌打ちをされることは日常茶飯事。「邪魔だ!」「どけ」と言われることもあり、押しのけるように追い抜いていく人もいた。 急ぐ人がスムーズに移動できるように「マナー」として広まったエスカレーターの片側空け。だが、障害のある人らにとっては、「困難」につながっている。 鉄道会社などが立ち止まって乗るよう呼びかけ、埼玉県では歩かず立ち止まって利用するよう義務づけた条例も出来たが、実態はあまり変わっていない。 川瀬
![左手足まひ、立ち止まると罵声が エスカレーター「片側空け」の困難:朝日新聞デジタル](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/0705689f1e1cefd803540340e6a018517e7da67c/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.asahicom.jp%2Farticles%2Fimages%2Fc_AS20211105002393_comm.jpg)