これは幼い子供を育てるという観点だけでなく、まだ年若い人たちを教える上でも有益な示唆を持った好著である。まず経済学の知識はまったくいらない。本書はどこからでも気軽に読み始めることができ、また日本語もスムーズに読めるので、広い範囲の読者を対象にすることに成功するだろう。 僕が面白いな、と思ったのは、本書の後半部分のインセンティブを扱ったところだ。子どもたちになんらかの望ましい行動(原因)が、将来的な報酬(結果)をもたらすものであることを納得させ、その因果関係を理解させることが、教育で重要であると著者は指摘している。 しかも将来的な報酬として「誉めること」を考えると、あまり誉めすぎてもいけない。なぜなら誉めることの希少性がなくなり、誉めることの価値が低下してしまうからだ。さらに著者は、興味深い指摘をする。「誉め方」にもコツがあるという。 ある実証研究によれば、努力を誉めることと、生得の才能を誉
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