謙譲の表現というと「させていただく」を思い浮かべる人は少なくないと思うが、使いこなすことが相当難しい表現である。それでは「させていただく」について解説していこう。 単なる「する」の謙譲語ではない 「させていただく」には大きく分けて2つの用法がある。厄介なことに、その2つは相反する性質を持っている。 1つ目は「厚かましくて申し訳ないと思いつつ、私は~する。ありがたいことに、それをあなたが許可してくれたから」という気持ちで用いるものだ。まだ許可が下りていない行為について述べるときには「させていただけますか」という願望や問いかけの形になる。 もう1つは、相手の意向など全く考慮せずに「私は~する」と一方的に宣言するものである。言葉づかいは丁寧でも自分勝手なことをするわけだから、表現と行為のギャップが大きい。 このように「させていただく」は単なる「する」の謙譲語ではない。謙虚な表現だと思い込んで「さ