当代随一の売れっ子ノンフィクション作家マイケル・ルイスの新作『1兆円を盗んだ男 仮想通貨帝国FTXの崩壊』(小林啓倫訳/日本経済新聞出版)は、暗号資産の取引所FTXを創業し、人類史上最速で資産100億ドル(約1兆6000億円:1ドル=160円で計算)を超える大富豪になったサム・バンクマン=フリードの栄光と没落を描いている。 「1兆円を盗んだ男」という邦題は、FTXの破綻によって87億ドル(約1兆円:当時のレート、1ドル=115円で計算)の顧客資産が返済不能になったことからつけられた(その後、かなりの割合で返済が進んだようだ)。原題は“Going Infinite; The Rise and Fall of a New Tycoon(無限を目指す 新たな大君の栄光と没落)”。 サム・バンクマン=フリードとは、どういう人物なのか? 一流のノンフィクションは「正しい場所」にいることから生まれるが