イラン北西部・ザンジャーンから相乗りの格安タクシーに乗り込み、古代遺跡、タフテ・ソレイマーンを目指す。タフテ・ソレイマーンは巨大な火口湖を中心とした遺跡群であり、ゾロアスター教の聖地とされている。現在残る遺跡はゾロアスター教を国教としたササン朝時代(A.D.226-651年)のものが主だが、歴史的には紀元前にまで遡るとされ、遺跡はその後も長い時間をかけて増改築がおこなわれてきた。 タクシーは150kmほど離れた場所にある目的地に向け、山道をどんどん登っていく。窓の外にはとても人が住めそうにない荒野が広がっている。気温はすでに一桁だった。車内では運転手が温かいチャーイ(濃い紅茶)をふるまってくれた。角砂糖を口に放り込んで溶かしながら飲むのがイラン式なのだそうだ。荒野はやがて雪景色に変わった。 こうして2時間ほどで到着した目的地には全く人気がなく、あたりはすでに軽い吹雪になっていた。一抹の不安