今春、児童養護施設出身者が厚生労働省に入省した。高橋未来さんは、東京都渋谷区の広尾フレンズで育ち、静岡大に入学。現在、医薬・生活衛生局で、血液対策を担う。 実は2年前、大手鉄道会社を受験していた。しかし内定直前に「入社するなら親のサインが必要です」と言われたという。 動揺した。小学校以来親とは疎遠で、選考過程でも生い立ちを話していなかったからだ。 「それはちょっと」 「え、何で。誰に育ててもらったの」 そんな押し問答をするうち頭が真っ白に。その場で辞退し、大学も休学。そのうち漠然と福祉の仕事を考えていたことを思い出し、翌年、厚労省を受けた。 高橋さんは1996年生まれ。児童養護施設には小学4年の時に入った。当時身長は高い方だったが、体重は平均以下。家では毎日白米とふりかけだけを食べていた記憶がある。「実は」と言いながら前髪を上げると、くっきりと額に傷があった。 「今、親に対する気持ちは“無