平成14年12月、元慰安婦に一時金(償い金)を渡すアジア女性基金の運営審議会委員だった法学者の横田洋三が参考人として出席した参院内閣委員会で、これまで基金を受け取った人数が各国で合わせて「全体の40%ぐらいで364人だ」と説明したときだった。反基金運動をしている人たちが詰めかけていた傍聴人席から「えっ?」という声が漏れた。その場にいた基金の元関係者(74)は振り返る。 「反対運動の人たちは『基金をほとんどの慰安婦が受け取っていない』と思っていたのではないか」 日本の市民団体や非政府組織(NGO)などの多くは、国家賠償を求め、反基金の立場だった。 基金立ち上げのときから関わり、基金の専務理事も務めた東大名誉教授の和田春樹は「韓国の元慰安婦の場合、基金を受け取ったのは最初の7人だけだと長い間、思われてきた。国別の人数の公表を控えてきたからだ」と話す。 国連人権委員会の特別報告者、ラディカ・クマ