「岩ガキ入荷しました」。居酒屋のメニューに心が揺れた。滑らかな食感に、濃厚なうまみ。以前食べた時の記憶がのどの奥からよみがえり、思わず注文したくなるが、値段は1個800円。酒のさかなとしては、ちょっと高い。どんな風に取られているのだろうか。産地の村上市・旧山北町を訪ねてみた。 ◇ 新発田市から車で国道7号を1時間40分走り、山形県境の手前約10キロにある寝屋漁港に着いた。岸壁から見下ろすと水深約3メートルの底や、小さな魚が泳ぐ様子がはっきり見える。 午前11時、防波堤をすり抜けて第8功晴丸が帰ってきた。富樫健一さん(36)が水色のかごを持ち上げ、岸壁で待つ母親の晴美さん(61)らに手渡した。かごには、大人の手のひらくらいの大きさの岩ガキがぎっしり。 健一さんは午前8時から、港から700メートルほど離れた岩場で岩ガキを取っていたという。 ウエットスーツを着て、両手にハンマーとピッケ