最先端の人工知能分野で活躍する人にとって、コンピューターで脳の活動をシミュレーションすることは極めて難しい課題である。しかし、コンピューターを脳のハードウェアと同じように設計できれば、それも容易になるかもしれない。 これを試みる新しい分野のことを「神経形態学的コンピューティング(neuromorphic computing)」という。 そして米マサチューセッツ工科大学(MIT)のエンジニアたちは大きなハードルを越えたのかもしれない。人工シナプスを持つチップを設計したのだ。 人間の脳の神経細胞の活動とコンピューターを比較 現時点で、人間の脳はいかなるコンピューターにも勝る性能を備えている。脳は800億もの神経細胞とそれらを結合する100兆を超えるシナプスを持ち、信号の流れを制御している。 一方、コンピューターチップは「バイナリー」という言語シグナルを伝達することで機能する。そこでは、あらゆる