人間の様々な病を、獣医学という観点から眺めると、新たな道が拓かれる。獣医学者だけが知っていた、人間の病の真実。人間の未知は、動物の既知。よく見知った動物たちの知られざる素顔は、背徳感を感じるほどに面白い。 オーストラリアのコアラたちの間では、クラミジア感染症が猛威をふるっており、絶滅の危機に晒されている。タコや雄の種ウマは、人間のリストカットを彷彿させるやり方で、自傷行為に及ぶことがある。愛嬌のある顔をしたワラビーは、エメラルドグリーンのケシの茎が一面に伸び出る魅惑的な風景をバックに、今日も麻薬でラリっている。 本書の著者が提唱する「汎動物学(ズービキティ)」とは、 このような動物の中に見られる人間的な病や現象を観察し、ヒトの医学へも役立てようという試みである。かつて世界は同じ医者が、動物もヒトも治療していた。だが都市化が進み動物と人間が分断されることに伴い、ヒトを見る医者と動物を見る医者
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